Q.心的外傷後ストレス障害(PTSD)とは何ですか。後遺障害(後遺症)は,何級ですか。
PTSDは,日本語では心的外傷後ストレス障害とか外傷後ストレス障害といわれています。
交通事故では,非器質性精神障害として障害の程度に応じて9,12,14級となります。
1 PTSDとはどういうものですか。
PTSDは英語では,Post-Traumatic Stress Disorderでそれを略しての呼び名です。
日本語では心的外傷後ストレス障害とか外傷後ストレス障害といわれています。
阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件を契機に注目されたものです
PTSDの4大症状として
①過覚せい症状(自律神経の覚せい過剰,過剰な驚愕反応,不眠)
②再体験症状(フラッシュバック)
③回避症状(行動障害)
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④否定的認知・気分br>
2 交通事故でなるのでしょうか。
交通事故で死ぬような目にあったという場合にPTSDとなることがあります
交通事故に当てはめると以下の様なことかと思われます。
①過覚せい症状(自律神経の覚せい過剰,過剰な驚愕反応,不眠) いつも緊張している。ドアの閉まる音,サイレンの音でもびっくりする。眠れない。怒りやすくなる。
②再体験症状(フラッシュバック) 事故のことが何度もよみがえる。眠っていても夢に出てくる。そのときに血圧が上がったり汗をかく。
③回避症状(行動障害) ④否定的認知・気分
事故現場に行けずに避けて通る。入通院した病院へは行けない。そのような場所を避けようとして帰宅したが,どのような経路を通ったかを覚えていない。
3 PTSDの診断基準はどうなっていますか。
WHO(世界保健機構)によるICD-10あるいはAPA(アメリカ精神医学会)によるDSM-Ⅳによるものとされています
ICD-10では「ほとんど誰にでも大きな苦悩を引き起こすような例外的に著しく驚異的,破局的な性質を持ったストレスの多い出来事」と定義をしております。
つまり,どちらかというと戦争・テロ・大災害を念頭に置いたものと言えます。
PTSDは交通事故等個人的な出来事でも発症するために,最近では,DSM-Ⅳを診断基準とすることが多いといわれています。
なお,DSM-Ⅳでは,PTSDを急性と慢性に区別し,症状の持続期間が3カ月未満の場合を「急性」,3カ月以上を「慢性」とします。
また,症状の始まりがストレス因子から少なくとも6ヶ月の場合を「発症遅延」と言います。
4 後遺障害はどうなりますか。
非器質性精神障害として
9級:非器質性精神障害のため,日常生活において著しい支障が生じる場合
12級:非器質性精神障害のため,日常生活において頻繁に支障が生じる場合
14級:おおむね日常生活は可能であるが,非器質性精神障害のため,日常生活において時々支障が生じる場合
【参考】診断基準 (DSM-Ⅳ)
A.
患者は、以下の2つが共に認められる外傷的な出来事の経験がある。
1.
実際にまたは危うく死ぬまたは重傷を負うような出来事を,1度または数度,または自分または他人の身体の保全に迫る危険を,患者が体験し,目撃し,または直面した。
2.
患者の反応は強い恐怖,無力感または戦慄に関するものである。
B. トラウマが,以下の一つ以上の形で再体験され続けている。
1.
出来事の反復的,侵入的,かつ苦痛な想起で,それは心像,思考,または知覚を含む。
2. 出来事についての反復的で苦痛な夢。
3.
トラウマとなった出来事が再び起こっているかのように行動したり,感じたりする
(その体験を再体験する感覚,錯覚,幻覚,解離性フラッシュバックのエピソードを含む,また,覚醒時または中毒時に起こるものを含む)。
4.
トラウマとなった出来事の一つの側面を象徴し,または類似している内的または外的きっかけに暴露された場合に生じる,強い心理的苦痛。5.
トラウマとなった出来事の一つの側面を象徴し,または類似している内的または外的きっかけに暴露された場合の生理学的反応性。
C. 以下の3つ(またはそれ以上)によって示される,
(トラウマ以前には存在していなかった)トラウマと関連した刺激の持続的回避と,全般的反応性の麻痺。
1.
トラウマと関連した思考,感情,会話を回避しようとする努力。
2. トラウマを想起させる活動,場所,人物を避けようとする努力。
3.
トラウマの重要な側面の想起不能。
4. 重要な活動への関心または参加の著しい減退。
5.
他の人から孤立している,または疎遠になっているという感覚。
6. 感情の範囲の縮小(例: 愛の感情を持つことができない)。
7.
未来が短縮した感覚(例: 仕事,結婚,子ども,正常な一生を期待しない)。
D. (トラウマ以前には存在していなかった)持続的な覚醒亢進状態で,以下の2つ以上によって示される。
1.
入眠または睡眠維持の困難。
2. 易刺激性または怒りの爆発
3. 集中困難
4. 過度の警戒心
5. 過剰な驚愕反応
E. 上のB,C,Dの症状が1ヶ月以上持続する。
F.
障害は,臨床的に著しい苦痛,または社会的・職業的・その他の重要な領域における 機能の障害を引き起こしている。