Q.泌尿器障害(排尿障害)に関わる尿流動検査法urodynamics or urodynamic study UDSにはどのようなものがありますか。後遺障害認定には必要でしょうか。
神経因性膀胱であるかどうかを判別する検査としては色々あります。
その検査の結果として神経因性膀胱として判断された場合にも,原因として損傷部位の特定が必要です。
その上で,蓄尿障害・排尿障害について後遺障害の認定対象となるのです。
1 膀胱内圧測定Cystometryとは何ですか。 (クリックすると回答)
(1)目的
膀胱の排尿圧を評価するために,蓄尿と排尿を検査室内で短時間内に再現し,膀胱容量と膀胱内圧の関係を測定するものです。
(2)方法
膀胱内に滅菌水またはガス(CO2)を15~30ml/分の割合で注入し,膀胱内圧と注入量を自動記録します。
(3)膀胱内圧曲線
膀胱内圧測定結果を横(X)軸に容量(単位ml),縦(Y)軸に圧(単位cmH2O)としてグラフ化して記録した際に,描かれる曲線を言います。
(正常成人は)膀胱内注入量150ml前後で,最初の尿意(初発尿意,FD=first desire )を訴え,さらに注入を続けると尿意が強くなり300~500mlで排尿を指示すると尿が排泄されます。
この時点での注入量を最大膀胱容量とします。最大(最高)注入量(Max Infused Capacity)を最大膀胱容量とみなしているのです。
(4)異常な膀胱内圧曲線
神経因性膀胱にみられる内圧曲線の異常には次の3種類があります。
①無抑制収縮(リンク)
②自律性収縮
③無緊張性収縮
2 尿流測定uroflowmetry とは何ですか。 (クリックすると回答)
(1)目的
1回排尿における排尿量の時間的変化の検査であり,排出障害のスクリーニング検査に用いられます。
(2)尿流曲線
測定結果を横(X)軸に排尿時間T(単位秒),縦(Y)軸に排尿率(単位ml/秒)としてグラフ化して記録した際に,描かれる曲線を言います。
なお,この曲線は排尿時間における時間毎の排尿率の変化として示されますが,排尿率を示す関数f(t)を排尿時間Tにおいて積分したもの(つまり尿流曲線とx軸とで作られる部分の面積)が排尿量です。
健常人では,排尿開始とともに上昇し,3~5秒で最高(値)に達したのち,ほぼ対称的に下降し,15~25秒で排尿が終了します。
以下のパラメーターが検出されます。
1回排尿時間:T
排尿量:V
最大尿流量率:Qmax maximum flow rate 曲線上の極値=最大値
平均尿流量率:Qave average flow rate V/T
最大尿流到達時間:排尿開始からQmaxに達するまでの時間 time to maximum flow
(3)パラメーターの評価
各種パラメーターの中で最も参考になるのは最大尿流量率Qmaxと平均尿流量率Qaveです。
(1)目的
静的状態における膀胱頸部から全長の尿道の圧配分を記録するもので,尿道の閉鎖機能を表する検査の1つです。
または,尿道全長にわたって内圧を連続的に記録する方法です。
つまり,尿道の全長での各地点においての圧力を測定するものです。
圧力の配分が安定していれば尿道の閉鎖機能が保全されます。
(2)方法
仰臥位で膀胱内を空にし,恥骨高をゼロ点設定し測定を開始します。
カテーテルの側孔を膀胱内に置き,液を1ml/秒以下の割合で注入しながらこれを5mm/秒の速度で徐々に引き抜きます。
(3)尿道内圧曲線
測定結果を横(X)軸に尿道長(単位cm),縦(Y)軸に尿道内圧(単位cmH2O)としてグラフ化して記録した際に,描かれる曲線を言います。
(1)目的
外尿道括約筋は陰部神経支配下の横紋筋であり,蓄尿時には持続的に収縮しており,排出時には完全にその活動を停止し,排尿終了とともにまた活動を始めます。
筋電図測定をおこなう目的はこれらの筋活動が保たれているか,障害されていればどのように障害されているか,神経原性の変化がみられるかどうかを検べることです。
すなわち,膀胱内圧と尿道括約筋筋電図とを同時に測定することにより,排尿筋と尿道括約筋との協調作用を評価できます。
つまり,健常人においては膀胱が空虚なときは放電の振幅と頻度が少ないが,膀胱容量が増加するに従って振幅・頻度ともに増加していき,排尿時には筋電図(の波形)が消失します。これは,排尿筋・括約筋協調運動を示しています。
一方,(前記の)膀胱の無抑制収縮uninhibited contraction UICがみられるときに外括約筋の筋活動が増強または消失しない現象を排尿筋-括約筋協調不全と言います。
(2)正常の膀胱内圧曲線と外括約筋筋電図(EMG)
膀胱内圧曲線は,前記のとおり膀胱に水を注入していくと膀胱内圧はほぼ一定に保たれ,外括約筋は蓄尿のために収縮するので,その筋活動は徐々に高まります。
その筋活動が外括約筋筋電図(EMG)の波形に現れて振幅・頻度ともに増加して行くことが分かります。
患者に排尿を命ずる(void)と外括約筋は排尿のために弛緩するので,その筋活動は消失します。その消失が外括約筋筋電図(EMG)に現れて波形が消えます。
排尿停止を命ずる(stop)と外括約筋の筋活動(収縮)が再び始まり,排尿筋の収縮も停止します。
(3)筋電図の異常
蓄尿時は,膀胱(排尿筋)が弛緩し,尿道括約筋が収縮しますが,持続的にあるべき筋活動が不随意に消失し,尿失禁の原因となることがあります。
その病態を無抑制括約筋弛緩uninhibited sphincter relaxationと言います。
排尿時に筋活動が消失せず持続するものを排尿筋外括約筋協調不全DSD(destrusor-external sphincter dyssynergia)とよび,排尿障害の主要な原因の1つです。
(1)圧-流量検査pressure flow study(PFS)
これは,排尿時における尿流と膀胱内圧,直腸圧(=腹圧)を同時記録することにより,被検者の排尿障害が排尿筋収縮障害によるものか,下位尿路閉塞によるものかを判別することができます。
排尿症ギアの低活動膀胱の診断にも有用です。
(2)尿流動態検査urodynamic study(UDS)
蓄尿期から排尿期にかけての排尿筋および尿道括約筋のふるまいは,尿流動態検査urodynamic study(UDS)によって観察することができます。
すなわち,膀胱に滅菌水を注入しながら,膀胱内圧,直腸圧(腹圧),外尿道括約筋筋電図を同時記録したものが用いられています。
ここで,膀胱内圧から直腸圧(腹圧)を引いた値を排尿筋圧として表示します。
正常と異なるUDS所見があれば神経因性膀胱を示すことになります。
そして,その内容により障害されている部位が特定されることになります。