Q.失語症とは何ですか。どのようなものがありますか。
失語症とは脳損傷によって,言語を話したり書いたりあるいは理解したりする能力が低下したり失われることです。
損傷した部位等によりその症状程度が異なってきます。
主要な失語症は
①全失語
②ブローカ失語
③ウェルニッケ失語
④健忘失語
の4つです。
失語症の有無・程度・分類は,標準失語症検査(SLTA)等の言語機能検査によって判定されます。
高次脳機能障害は,意思疎通能力・問題解決能力・作業負荷に対する持続力及び持久力・社会行動能力の4分野における6段階評価の総合で判断されます。
失語症によって,意思疎通能力をはじめとした能力に大きな影響があります。
失語症とは
(1)言葉を話す
(2)文字を書く
(3)言葉を聞いて理解する
(4)文字を理解する
(5)復唱する(いわゆるオウム返し)
の1つ以上が障害された状態を言います。
2 失語症は,どのように分類されますか。 (クリックすると回答)
(1)大きな分類
主要な失語症は①全失語②ブローカ失語③ウェルニッケ失語④健忘失語の4つがあります。
そして,まれな失語症は,その主要な4つの失語症に対応しながらもわずかに違う面がある混合型超皮質性失語等があります。
(2)主要な失語症
①全失語
②ブローカ失語
③ウェルニッケ失語
④健忘失語
の4つです。
これは,流暢性の有無でまず分けられます。
a)流暢性がないもの=非流聴性失語
つまり,発話がないか,あってもたどたどしくわずかしか話さないものであり,
①全失語②ブローカ失語が該当します。
b)流暢性はあるもの=流聴性失語
なめらかに比較的良くしゃべるのが
③ウェルニッケ失語④健忘失語です。
そして,
非流聴性失語である①全失語②ブローカ失語で,
重度の理解障害があるのが①全失語であり,
軽度から中度の理解障害があるのが,②ブローカ失語です。
また,流聴性失語の③ウェルニッケ失語④健忘失語では,
中度から重度の理解障害があるのが③ウェルニッケ失語であり,
理解障害がないかあっても軽度のものが④健忘失語です。
言語を表出することも,理解することも,復唱も,いずれもが重度に障害されている状態です。
発話は全く見られず無言の状態です。時折見られる発話も意味不明で発話と言うよりも発声というべきものです。
理解障害も重度です。
日常用品の名称に対する選択も,はい・いいえで答える質問においても回答が困難であるというレベルの重度の障害です。
復唱,呼称,読み,書字は,ほとんど不可能です。
失語症の中でも最重度のもので
認知レベルの低下もあることから
高次脳機能障害としては意思疎通能力・問題解決能力・作業負荷に対する持続力及び持久力・社会行動能力
の4分野すべての減退となり,重度と考えられます。
4 ブローカ失語症(皮質性運動失語)とは何ですか。(クリックすると回答)
(1)症状
非流暢なたどたどしい発話であり,復唱も不良ですが,聴覚的理解が比較的保たれています。
つまり,発話,理解(文法的理解),復唱,呼称,読み,書字とほとんどの分野での障害があります。
特に発話は
発話量の減少する,
発語することが困難となる,
1語か数語の短い文しか発せられない,
文法を無視する,
言いたい語が出てこない,
音や語の間違いが目立つ,
という状況が厳しいものです。
ただし,他人の言葉の理解は正常であり他の知的機能も正常です。
高次脳機能障害としては,意思疎通能力・さらには,社会行動能力の障害を生じると考えられます。
ブローカ野
5 ウェルニッケ失語症(皮質性感覚失語)とは何ですか。 (クリックすると回答)
(1)症状
流暢でありながら,
錯語が目立つ
発話,理解障害,復唱障害を特徴とする失語です。
発話は,構音に問題はなく,話す文の長さも保たれているものの,
内容は質問や状況とはかみ合わないちぐはぐなものであり,
言い違いも多く,話す量に比べて内容は空疎なものです。
文法は保たれているものの,錯語(言い違い)のために,
文法的にも正常とは思われないように聞こえることがあります。
聴覚的理解障害が特徴であり,
語と文のレベルで障害があります。
復唱も呼称も障害されています。
読みも障害されていることが多いですが,
読みの理解力の方がやや良好の場合があります。
文字言語では特に書取が悪いとされています。
理解障害もあることから,認知レベルの低下もあり,
意思疎通能力・問題解決能力・作業負荷に対する持続力及び持久力・社会行動能力の4分野すべての減退があります。
高度の高次脳機能障害となると考えられます。
ブロードマン地図
(1)症状
言いたい語が出てこない,
呼称が困難と言うことがあり,
遠回しな言い方をしますが,流暢な構音が保たれているため発話はできます。
また,理解と復唱は良好です。
名詞が出てこないために,「あれ」「これ」「それ」といった指示代名詞が多くなったり,
名詞の代わりに用途による説明,
たとえば箸を「ご飯を食べるときに使うもの」という様に,遠回りな言い回しが多くなります。
時には錯語(言い違い)が出てきますが,
周囲の人に指摘されると,気づいて直すことができます。
呼称も障害されたり,錯語,遠回りな表現が多くなりますが,
箸を箸と呼べなくとも,これは箸ですかと問われればすぐに答えることができます。
他と比べると,重症ではないですが,認知症と誤解されやすく意思疎通能力・さらには社会行動能力の低下が指摘さらます。
(1)言語機能検査の意味
いわゆる失語症のための検査です。認知症でもない限りは失語症でなければ高い得点となります。従って,これらの検査で点数が低いとなると,失語症が疑われます。
(2)代表的な言語検査
①標準失語症検査(SLTA)
患者の聞く,話す,読む,書く,筆算の5項目の得点パターンにより,失語症の古典的分類が可能になります。つまり,失語症の有無,重症度,タイプの鑑別ができます。
この結果を踏まえて,治療,特にリハビリの計画を立てることができるとされています。
②WAB失語症検査
自発話,話し言葉の理解,復唱,呼称,読み,書字,行為,構成の8主要項目によって言語機能の総合的な検査をします。
この検査によって,失語症の中での,全失語,ブローカー失語,ウェルニッケ失語,健忘失語の4分類とその中での程度の評価が可能です。
③トークンテスト Token Test
トークンとは,札のことです。形,色,大きさが異なる札を使って言語命令に従って札を動かすことができるかを評価して,聴理解を判断します
。聴覚的言語理解の他にも短期記憶障害の検査にも用いられます。