Q.主婦だが,夫の事業の専従者給与所得者に税金申告上なっていた場合に,休業損害・後遺障害の算定は賃金センサスで行えますか。
A.
1 家事従事者の基礎収入
主婦は,家事従事者とされています。それは,夫などの家族のために家事労働を行っているからです。
その場合には,休業損害・後遺障害の算定における基礎収入は,全年齢または年齢別賃金センサスの平均賃金によるのが,裁判例では通例です。
2
事業者の妻としての主婦
夫が,個人事業を営んでいる場合においては,妻である主婦が夫の税金申告では専従者として給与をもらっている形式にしていることが多く見られます。
そのような場合に,基礎収入として専従者給与額によるのか,それとも原則通り賃金センサス平均によるのか問題となります。
3
結論
専従者給与は,通常は事業所得者の税務対策上のものです。
したがって,給与を受け取ったことにはなっているものの,賃金センサス平均による妨げにはならないというべきです(福岡地裁 平成11年9月2日判決)。
なお,同じ理由から賃金センサス平均に専従者給与を上乗せすることもできないと考えるべきです。
【参考判決】
現実には,専業として伝票の整理などの事務を手伝っていたわけではなく,主婦業の合間に時々手伝っていたに過ぎず,税務申告上の専従者としての給与も,税務対策上の専従者控除として行われているもので,現実に原告に支給されていたものではない賃金センサスを用いることが不相当とはならない。
福岡地裁 平成11年9月2日判決
事件番号 平成10年(ワ)第4379号
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1390号