Q.びまん性軸索損傷で,なぜ脳細胞が損傷されるのですか。
A.
外傷により,脳全体に損傷が及んだものを総括して「びまん性脳損傷」と呼んでおり,これは,損傷部位が局所的に存在している局所性脳損傷(脳挫傷等)に対して用いられるものです。
びまん性脳損傷には,軽症(脳しんとう)から重症(持続的意識障害)まで種々あります。
びまん性軸索損傷は,びまん性脳損傷の中でも重症例であって病理的に軸索の損傷を示すものです。
軸索とは,神経細胞(ニューロン)から出ている長い突起であり神経線維とも言います。
軸索末端で他の神経細胞(ニューロン)とシナプス(神経接合部)を形成し,電気的に信号(インパルス)を伝達して,ネットワークを構成しています。
びまん性軸索損傷は,直接に神経細胞(ニューロン)そのものを損傷するのではなく,軸索が損傷することにより,それが神経細胞(ニューロン)の死滅をもたらします。
びまん性軸索損傷と局所性脳損傷とは,混在することが分かってきております。
例えば,急性硬膜下血腫や急性硬膜外血腫とびまん性軸索損傷との合併です。
そして,脳挫傷との合併も認められております。
これは,頭部外傷のメカニズム,特に閉鎖性頭部外傷では衝撃が脳全体に及んでいることからも理解が可能です。
いうなれば,純粋なびまん性軸索損傷(注:明らかな脳出血がない)は存在するものの,純粋は局在性脳損傷は存在しないとなります。