Q.施設介護中ですが,本人と家族の希望から自宅(在宅)介護とするための費用を要求することは可能でしょうか。

[介護費用,施設介護,自宅介護,遷延性意識障害,高次脳機能障害]

A.

自宅(在宅)介護となると将来介護費用の項目が変わり,金額も高額化する可能性があることから,
賠償額増額のための主張であるのか,真意として自宅(在宅)介護を望んでいるのか,
そして介護が現実に可能かどうかが問われることになります。

1 どのような判断が前提となるのですか。(クリックすると回答)

施設に入所中の被害者や家族が,自宅(在宅)での介護を望んでいることは,多いと思います。
しかし,被害者が現在入所中の施設がどのようなものであるか,また,被害者の身体状況から見て自宅(在宅)介護が可能であるか,自宅での受け入れ準備ができているかにより,「在宅(自宅)介護の蓋然性」があるかどうかで総合的に判断がされます。

2 在宅(自宅)介護の蓋然性は,どのように判断されるのですか。(クリックすると回答)

裁判例から見ると,以下のような要素を入れて「在宅(自宅)介護の蓋然性」を判断していると考えられます。

(1)現在入所中の施設が,いずれ退所することを前提としているか。
(2)被害者が,在宅(自宅)介護が可能な状況にあるか。
(3)受け入れる家族が在宅(自宅)介護を前提とした十分な準備状況にあるか。あるいは十分な準備ができる状況にあるか。

3 具体的にはどうなりますか。(クリックすると回答)

それでは,さらに,以上の要素を見ていきます。

(1) 現在入所中の施設が,いずれ退所することを前提としているか。

入所中の施設の性格上,長期に入所することができない,あるいは病院がそもそも社会復帰や在宅(自宅)介護へ移行することを目的としている場合には,ほぼ条件をクリアすることができると思われます。

しかし,被害者の身体状況が医学的に見て在宅(自宅)介護では困難である場合には,他の施設での介護を検討せざるを得ないことになります。

逆に,現在入所中の施設が,いずれ退所することを前提としていない,つまり,終身を含めた長期の介護を目的としている場合には,在宅(自宅)介護の蓋然性が一律にはないことになるのでしょうか。

(2) 被害者が,在宅(自宅)介護が可能な状況にあるか。

施設での日常あるいは医師の判断から見て,医学的な不安要素がなければ問題はないと思われます。
但し,自宅改造がどこまで必要かどうかという点での問題になる可能性はあります。

(3) 受け入れる家族が在宅(自宅)介護を前提とした十分な準備状況にあるか。あるいは十分な準備ができる状況にあるか。
この点は,特に重視されていると思われます。
具体的には,
①将来的な介護計画があるか,その内容はどのようなものか→家族・近親者介護か,職業介護か。あるいはその組み合わせか。
②自宅改造の着手があるかどうか,着手がなくとも計画の有無・内容(見積書・図面があるか)
③過去に在宅(自宅)介護をした実績があるか。あるとして,その具体的な内容。
④自宅以外の介護となる他の施設への入所申し込みをしているかどうか。

4 結論としてはどうなりますか。(クリックすると回答)

以上は,裁判所が在宅(自宅)介護の蓋然性する際の要素であり,これらのすべてを満たさなければならないと言うことではありません。
しかし,明らかに在宅(自宅)介護が便宜的な主張であり,真意ではないと解釈されるような場合は,否定される可能性が高いと言えます。
さて,その上で,在宅(自宅)介護をする場合には,自宅改造費及び将来の介護費用が問題となります。

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