Q.膝が動揺関節となった場合には後遺障害(後遺症)になりますか。
膝に動揺関節を残してしまうと後遺障害8級,10級,12級に該当する可能性があります。
動揺関節とは,関節の不安定性と言うことです。
動揺関節とは,可動域制限と言うよりも不安定性という本来にはない異常な動きを示すことです。
動揺関節については,後遺障害等級表には,該当する箇所はありませんが,その運動が自動か他動かを問わずに次の通りに認定するとされています。
8級=常時硬性補装具を必要とするものは,用廃に準ずる。
10級=時々硬性補装具を必要とするものは,著しい機能障害に準ずる。
12級=重激な労働等の際以外には硬性補装具を必要としないものは,12級の「単なる」機能障害に準ずる。
12級=習慣性脱臼及び弾発ひざは,12級の「単なる」機能障害に準ずる。
関節一般の構造と同じですが,関節は骨と骨の接合部分です。
関節にはまず骨と骨との接合部分を包み保護する繊維性・靱帯性組織の関節包があります。関節包にくるまれている骨の骨頭先端は関節軟骨で覆われております。
また,関節包内部は滑液で充たされており,関節の動きを助けまた軟骨に栄養を与えています。
靱帯は関節包の上に密着して関節を保護すると共に関節運動を制御しています。膝関節は,大腿骨と脛骨・腓骨の接合部分です。
靱帯は,関節包と共に膝の静的安定性を担っています。主な靱帯として,前十字靱帯・後十字靱帯・内側側副靱帯・外側側副靱帯があります。
前十字靱帯・後十字靱帯は,関節包内にあって,前十字靱帯は,脛骨が前に滑り出すのを防ぎ,後十字靱帯は,逆に後方にずれるのを防ぎます。
内側側副靱帯は,膝関節内側を補強する幅広い靱帯で,伸展位(伸ばした状態)で緊張し屈曲位(曲げた状態)でやや弛緩します。
外側側副靱帯は,膝関節外側を補強する丸い索状の靱帯で,大腿骨外側顆から腓骨頭に付着しています。
なお,半月板とは,内側および外側の脛骨関節面の辺縁部を覆う繊維軟骨で関節接触面の安定性を増大させて,荷重を分散・吸収する機能を持っています。
半円状で外側半月と内側半月とに分かれています。
内側半月は,(内側)側副靱帯としっかり結びついていますが,外側半月は,(外側)側副靱帯とは結合していません。
そのために,外側側副靱帯の方が内側側副靱帯よりも可動性が大きくなっています。いずれの半月板も膝関節の伸展時に緊張し,屈曲時に弛緩します。
①外側側副靱帯(LCL lateral collateral
ligament)損傷
単独損傷なら保存的治療で十分とされますが,まれに動揺性が残ることがあります。
②内側側副靱帯(MCL medical collateral
ligament)損傷
靱帯損傷の中でも最も多いものです。損傷部位としては,大腿骨起始部が多く,また直達外力でも介達外力でも生じます。
単独損傷なら不安定性は小さく装具装着などの保存的治療で十分とされます。
しかし,十字靱帯損傷を合併した複合靱帯損傷では観血的治療が必要となります。
③前十字靱帯(ACL anterior cruciate ligament
)損傷
単独損傷を起こしやすい部位です。また,半月板損傷との合併も多く見られます。
なお,後遺障害としてあり得るのは,この場合も動揺関節です。
④後十字靱帯(PCL posterior cruciate ligament
)損傷
保存的治療とする例が多いとされています。しかし,複合靱帯損傷の場合には再建術が行われますが,後遺障害として動揺関節です。
⑤複合靱帯損傷
内側または外側側副靱帯損傷に十字靱帯損傷を合併した重篤な外傷です。
膝関節脱臼を伴っている場合には,前及び後十字靱帯損傷が生じていることが多いとされています。
特に内側側副靱帯,内側半月板と前十字人他院損傷を合併している場合には膝の動揺性が強く,unhappy triad(不幸な3つの組み合わせ)とされています。
ばね膝とも言って,膝関節の屈伸運動の際に,ある一定角度で抵抗があり,その角度を通過すると急に屈伸ができるようになる状態・症状を言います。
最も多い原因は半月板傷害とされています。