Q.脳損傷について,CT画像は,どのような活用がされるのですか。
X線の吸収のされ方により画像を得て,コンピューター解析を用いているものです。
しかし,それは,CTが簡単に異常を発見できるものであるかどうかとは別のものであります。
特に,局所性脳挫傷を伴わない,びまん性軸索損傷の場合にはCTでは著明な所見に乏し
いとされています。
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CT computed tomography
平面(二次元),立体(三次元)の物体については,投影されたデーから構成される無限集合から,必ず一意的に再生ができるという原理に基づくものです。
つまり,CTはX線を使って物体に照射して,その物体を通過した後の照射強度の減衰を投影させるものです。
つまり,X線を照射して物体を通過した後のX線の吸収のされ方により画像を得るものです。
その画像の抽出にコンピューター解析を用いているのです。
なお,CTにはX線を使うことから被爆の問題と,CT画像特有のアーチファクト(実態と異なる虚像)の問題があります。
X線の吸収値については絶対値を用いていません。
その代わりに空気を-1000,水を0とした基準値を用いて相対的なX線吸収値を用いているのです。
例えば,骨/カルシウム80~1000,凝血40~95,脂肪-20~-100
その吸収値を利用して白黒のコントラストによる画像が得られます。
神経放射線検査の基本とされております。
それは,コントラストを構成する要素がMRIとは異なり,X線吸収値のみと単純であり,解剖学的構造や異常所見の理解ということがしやすいからです。
しかし,それは,CTが簡単に異常を発見できるものであるかどうかとは別のものであります。
脳出血は,異常高吸収値を示すとされています。
他方では,時間と共に高吸収値から低吸収値に変化します。特に長時間を経た脳出血は,完全に低吸収値となり(上記凝血参照),しかもスリット状になるために,CTでは脳出血と脳梗塞との完全な区別は難しいとされています。
この点は,医学生の基本的な教科書にも触れられています(「標準脳神経外科学 第12版」医学書院 72頁)。
さらに,典型的な急性期のくも膜下出血は脳底槽が血液で充満して高吸収を示し,診断は容易とされています。
しかし,びまん性にくも膜下出血がある場合あるいは時間が経過したくも膜下出血は(低吸収値となるため)見落とすことがあるため注意が必要であるとされています。 (同上 73頁)。
いわゆる局所性脳挫傷を伴わない,びまん性軸索損傷の場合にはCTでは著明な所見に乏しく転帰として遷延性意識障害となる重症であっても,脳梁や深部白質並びに上位脳幹背外側部にわずかに出血がみられる程度であるといわれています(同上281,282頁)。