Q.給与所得者の基礎収入(後遺障害及び死亡の逸失利益)は,どのように算定されるのですか。特に,どのような場合に賃金センサスが用いられるのでしょうか。

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A.

1 賃金センサスにおける平均賃金を使用するための要件は,何でしょうか。   (クリックすると回答)


①事故前の現実収入が全年齢平均賃金よりも低額であること
②比較的若年であること,この場合若年とは概ね30歳未満
③将来的に生涯を通じて平均賃金程度の収入が得られる蓋然性があること

そして,③の蓋然性がある平均賃金のターゲットによって適用される平均賃金が異なってくると言えます。
また,この蓋然性を検討する要素としては,現在の職業,職歴,どうして現実収入との乖離があるのか。
要するに現実収入の低い原因が納得できるものか,将来収入が増加する余地があったのかが挙げられます。

2 若年者について基礎収入で問題になるのは,どのようなことですか。  (クリックすると回答)


三庁共同提言というのは,平成11年11月22日に東京,大阪,名古屋の交通専門部の総括裁判官から出されたものです。

逸失利益について若年者については,
原則として比較的若年,おおむね30歳未満の,比較的若年の被害者で生涯を通じて全年齢平均賃金または学歴別平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められる場合については,
基礎収入を全年齢平均賃金または学歴別平均賃金によることとし,それ以外の場合には事故前の実収入による」としています。

つまり比較的若年の被害者について言えば,逸失利益の基礎収入として「全年齢平均賃金または学歴別平均賃金程度」とすると述べています。

事故前に同年齢の平均額以上か近い実収入を得ていた場合には,全年齢平均賃金とされることが,大半かと思われます。

実収入が低い正規雇用,さらにはアルバイト・派遣社員・契約社員等の非正規雇用に問題となります。

その場合においての最近の裁判の傾向は,

ア 女子の場合
アルバイト等で現実収入が少ない場合であっても,概ね全年齢女子労働者計として,その中で年齢・経歴等の事案に合わせて学歴別あるいは学歴計での平均賃金を用いて,場合によってその上で減額をしている傾向にあります。
また,専門学校・短大,大学を卒業している場合には学歴も反映されます。
しかし,現実収入が少ない場合には,その理由により平均賃金から若干減額される可能性もあります。

イ 男子の場合
概ね,男子については,全年齢男子労働者計として,その中で年齢・経歴等の事案に合わせて学歴別あるいは学歴計での平均賃金を用いて,場合によってその上で減額をしている傾向にあります。

ウ 全体として
男女それぞれ,全年齢男女別労働者計として,その中で年齢・経歴等の事案に合わせて学歴別あるいは学歴計での平均賃金を用いて,場合によってその上で減額をしている傾向にあります。

3 年齢30歳代で賃金センサスを使用している判決例はありますか。  (クリックすると回答)


30歳代となると1の要素の中では若年者の点が外れています。
そして,賃金センサス平均を適用するだけの理由が必要となっています。

現実収入で認定されるものが多くなります。
そして賃金センサスによる認定がされる場合でも学歴別が多くなります。

事故前年あるいはそれよりも前にさかのぼっての職歴と収入の実績に応じて場合により賃金センサスを使用していることです。
この点は,20歳代よりも認定の条件が厳しくなっていることかもしれません。

4 年齢40歳代で賃金センサスを使用している判決例はありますか。  (クリックすると回答)


実際には,事故前の現実収入を基礎収入とされることがほとんどと思われます。
職歴を重ねて,一定の実績ができあがりつつあるために,将来の蓋然性を含む賃金センサスをダイレクトに適用させるのは難しいと言うことかもしれません。

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