Q.運行供用者あるいは運転者が責任無能力者だったならば,誰が責任を負うのですか。

[認知症,責任無能力者,運行供用者,高齢者]

A.

心神喪失状態にある場合には,その加害行為については責任能力がないものとして法的な責任を問われません(民法713条)。
その場合に,いったい責任はどうなってしまうのか。誰が責任を負うのか重大です。

なお,今後は,運行供用者あるいは運転者が高齢者で認知症状のためこの論点に関係する事案の増加が考えられます。


☆民法713条
精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。

1 どのような分類ができますか。   (クリックすると回答)


運行供用者あるいは運転者が責任無能力者の場合とは,以下の様な分類が可能です(高野真人著 「要約交通事故判例140」学陽書房p14,15)。

①運行供用者=運転者が責任無能力者
②運行供用者と運転者は別人で,運行供用者が責任無能力者
③運行供用者と運転者は別人で,運行供用者が責任無能力者

2 ①運行供用者=運転者が責任無能力者はの場合はどうなりますか。  (クリックすると回答)


運転者として免責されたとしても,責任無能力者としては,自賠法3条の運行供用者の責任は免責されません。
それは,自賠法3条但書では,運行供用者責任が免責され部場合が極めて限定されているからです(大阪地裁平成17年2月14日判決)。

したがって,運行供用者が責任を負うので,被害者としては心配ありません。

☆自賠法3条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。
ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

3 ②運行供用者と運転者は別人で,運行供用者が責任無能力者の場合はどうですか。  (クリックすると回答)


この場合に運転者は責任能力がある場合であり,①と同様に運行供用者が責任無能力者であったとしても,免責されません。

したがって,運行供用者が責任を負うので,被害者としては心配ありません。

4 ③運行供用者と運転者は別人で,運転者が責任無能力者の場合はどうですか。  (クリックすると回答)


運転者が責任無能力者であれば,運転者には不法行為責任は発生しません。
そして,責任無能力者に運転させていた運行供用者に責任はないのでしょうか。

この点について,民法715条の使用者責任を否定したものもあります(京都地裁 平成13年7月27日判決)。
形式論からすれば,運転者に不法行為が成立しないから使用者責任は発生しないと言うことなのでしょうか。

しかし,運行供用者と運転者の関係,あるいは運行状況から運行供用者責任を肯定すべき場合があると考えます。

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