Q.もともと結婚退職を予定していたところが,退職前に交通事故に遭い退職予定日を超えて休業した場合に,どの範囲まで休業損害は認められますか。
具体的に考えるとします。
Aさん(27歳)が平成27年8月31日結婚予定として同年6月30日退職予定でした。
ところが,同年3月31日に交通事故の被害に遭い,勤務していた会社を休業して同年6月30日退職を迎えました。なお,同年12月31日に症状固定しました。
そして,さらに婚約解消(複雑にしないために事故との因果関係はないものとします。)となった場合と無事に結婚をした場合と分けてみます。
1 退職前の休業損害
勤務をしていたのですから,通常の休業損害として考えることは別に問題は無いと言えます。
2 退職後のAさんは無職者か?主婦か?
結婚予定と言うことであり,同居生活を開始していなければ主婦つまり家事従事者とは言えません。(既に同居していれば内縁関係に近いととして家事従事者と言えそうです。)
しかし,全くの無職者なのでしょうか。形式的には退職をしていて主婦予定ということはいえるものの,やはり無職となりそうです。
3 無事に結婚をした場合はどうなるか
平成27年8月31日以降から主婦つまり家事従事者として傷害部位・程度あるいは後遺障害内容によっては症状固定日までの休業損害が認められると考えます。
4 婚約解消となった場合はどうなるか
仮に平成27年7月31日に婚約解消となった場合,Aさんはとりあえず主婦予定でもなくなったと言えます。
しかし,無職として扱うのは不公平と言えます。
この場合には,実際の感情の問題はさておくとしてAさんは再度就職するために求職活動をする準備期間として休業損害を認めるべきであると考えます。
(以上「交通事故損害賠償の新潮流 (財)交通事故紛争処理センター創立30年記念論文集」p300 「9 結婚予定者の休業損害の可否」森部節夫著 を参照させて頂きました。)