Q.事業所得者(個人事業者)が,事故に遭わなければ仕事をして得られたであろう収入を休業損害として請求することはできますか。
事業所得者が,休業損害として請求できるのは,現実の収入減があった場合とされています。
すると,
事故に遭わなければ仕事をして得られたであろう収入というのは,果たして現実のことなのかが問題となります。
しかし,例外として認められることがあります。
1 事故による受傷によって契約が解除された場合はどうですか。(クリックすると回答)
個人事業者ですから,フリーの立場で複数の請負契約ないし委託契約をしていることが多いと思われます。
事故によって,契約が解除された場合あるいは事故により契約を履行できないために解除されたならば,それに関係する損害を賠償されると言えます。
個人事業者の休業による損害,それも映像コンテンツの企画,演出等の業務を行っていた場合の具体的なDVD制作が交通事故による受傷によって途中で頓挫したことによる損害
を認めたものがあります(東京地判平成18年7月19日,交民集39巻4号1001頁)
2 雇用形態に近い個人事業者の場合はどうですか。(クリックすると回答)
一般的には,形式的には請負契約であっても,特定の会社等から継続して受注していることや,日給制等で名目はともかくも賃金に近い実態があることで,通常の休業損害であると証明できれば請求は可能と考えられます。
あるいは,そのような形態で働く予定だったのが,事故で働けなくなってしまった場合はどうでしょうか。
雇用(労働)関係でも,内定段階での将来の得られたであろう休業損害については,通常では厳しい主張立証が要求されます。
そのことからは,雇用形態での個人事業者の場合には,休業損害を認めることは極めて困難と思われます。
しかし,一定の資格を有する専門的職業(医師,歯科医師等)では,内定段階でも就労する予定であったことが立証されれば休業損害が認めらると考えられます。
就労予定であった歯科医師がその前に受傷した場合の休業損害をみとめた判決があります。(大阪地判平成18年9月15日,交民集39巻5号1291頁・自動車保険ジャーナル・第1683号)