Q.自転車と歩行者の事故で,衝突が歩道上と路側帯の各場合において過失割合は,どのようになりますか。
歩道は,自転車の通行は原則として許されておりません。
極めて例外的に通行が許されております。
しかし,その場合にも
原則として歩行者の過失はゼロであり,
歩行者に信義則違反がある場合に限り修正要素として過失相殺が考えられると言えます。
道路交通法の規定からは,歩行者と自転車とも路側帯の通行を認めております。
その点から,自転車の通行を歩行者も予見すべきかどうかで,過失相殺率を歩行者ゼロを前提とするか,
あるいは若干でも過失があることを前提にするか,で考え方が分かれています。
1 歩道上における過失割合は,どのようになるでしょうか。
(1)同一方向に進行する歩行者と自転車の場合
これは,自転車が歩行者に追突したものと考えられ,歩行者の過失相殺率はゼロと言うべきです。
(2)対向方向に進行する歩行者と自転車の場合
正面衝突です。
自転車が,一時停止義務を果たしていれば十分に防止できたはずです。
対面なので,歩行者にも結果回避義務があるとの反論が自転車側から出てきそうです。
しかし,歩行者に信義則から見て高度な義務違反がある場合に限り過失相殺が認められます。
例えば,歩行者がふらつきながら歩いていたような場合です。
ふらふら歩いていた原因等にもよると思われますが,
せいぜいが10%であり,それ以上とするには,特段の事情が必要と考えます。
(3)自転車直進中に歩行者が交差して歩道に入ってきた場合
要するに,歩行者の歩道外からの歩道への進入という形態です。
実際の裁判例において,
歩行者の信義則違反を認めて10%の過失相殺を認める説(A説),
歩道は歩行者が通行すべきことを貫いて過失相殺をゼロとする説(B説),
自動車通行が認められた歩道であるかによりゼロと10%を区別する説(C説)に分かれています。
(4)歩道に歩行者が佇立していた場合
佇立というのは,立ったままでいることです。
この場合には,歩行者が信義則上で何かに違反するというのはあり得ません。
歩道は歩行者の通行する場所です。
歩行者には,過失は全くないと考えます。
自転車は,停止して,歩行者の動きをよく見て必要があれば,声掛けをすればいいからです。
2 路側帯における過失割合は,どのようになるでしょうか。
日弁連の試案が公表されていますが,
裁判所における判決例において方向性が固まっている段階ではありません。
すなわち,
①歩行者も路側帯を通行して来る自転車の存在を前提に通行すべきだという考え方と,
②あくまでも歩行者優先を貫こうという考え方に分かれています。
前者①によれば,路側帯上の事故については,歩道上の事故との中間的な過失相殺率となる傾向にあります。
後者②によれば,基本過失相殺率は歩行者ゼロとなります。
要は,道交法17条の2第2項をどのように解釈するかの違いです。
前者は,この規定により,路側帯通行において歩行者から見ても自転車が混在する通行を予測して,通行しなければならないから,ある程度の過失はあるという解釈を導きます。
(軽車両の路側帯通行)
第十七条の二 軽車両は、前条第一項の規定にかかわらず、著しく歩行者の通行を妨げることとなる場合を除き、
道路の左側部分に設けられた路側帯(軽車両の通行を禁止することを表示する道路標示によつて区画されたものを除く。)を通行することができる。
2 前項の場合において、軽車両は、歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行しなければならない。