Q.外貌の醜状(醜状痕,醜状障害)とは何ですか。後遺障害(後遺症)は,何級となりますか。

[労働能力喪失,外貌醜状,線状痕,逸失利益,醜状痕,醜状障害,頭蓋骨]

A. 現在では,外貌の醜状により男女とも同じ基準で後遺障害等級3段階でが定められております。

ただし,外貌の醜状(醜状痕,醜状障害)による等級が認められたとしても,後遺障害逸失利益が認められることは容易ではありません。


1 外貌の醜状(醜状痕,醜状障害)とは何ですか。   

外貌とは,頭部,顔面部,頸部のごとく,日常露出する部分を言います。

上肢下肢については,露出することが通常の部分,つまり,
上肢の露出面は,上腕(肩関節以下)から指先まで,
下肢の露出面は,大腿(股関節以下)から足の背まで,
を言います。

「醜状」とは原則として,人目につく程度以上のものを言います。
したがって,人目につく以上のものでなければなりませんから,瘢痕,線状根及び組織陥凹であって,眉毛,頭髪等にかくれる部分については,醜状として取り扱いません。


2 後遺障害等級の変更については,どのようなものですか。  

【平成22年6月10日以降に発生した事故】
外貌に著しい醜状を残すもの   →7級12号
外貌に相当程度の醜状を残すもの →9級16号
外貌に醜状を残すもの →12級14号

改正以前は,女性の方が男性より等級が高くなっていました。

それは,女性の方が醜状によって受ける精神的苦痛が男性よりも大きいのだという社会通念に基づいていたと言われています。

しかし,2011年(平成23年)5月2日施行の改正自賠法施行令で外貌醜状について改正され男女差がなくなりました。
また,外貌醜状は,著しい醜状,(単なる)醜状の2種類であったのが,間に9級16号「相当程度の醜状」が入り,3種類となりました。
改正自賠法施行令は,平成22年6月10日以降に発生した事故に適用されます。

第9級については,女性の外貌に著しい醜状を残すものとして今まであった7級12号としていた「人目につく程度の長さ5センチメートル以上の線状痕」について「医療技術の進展により傷跡の程度を相当程度軽減できる障害を新設する「第9級」として格付けを変更して男女共通としたものです。


3 現在の後遺障害等級については,どうなっていますか。

(1)外貌における「著しい醜状を残すもの」(7級12号)
原則として次のいずれかに該当する場合で,人目につく程度以上のものを言います。

a. 頭部にあっては,手のひら大(指の部分は含みません。以下も同じです。)以上の瘢痕又は頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
b. 顔面部にあっては,鶏卵大面以上の瘢痕又は10円銅貨以上の組織陥凹
c. 頸部にあっては手のひら大以上の瘢痕


(2)外貌に「相当程度の醜状を残すもの」(9級16号)
長さ5センチメートル以上の線状痕で,人目につく程度以上のものを言います。

(3)外貌における「(単なる)醜状を残すもの」(12級14号)
原則として次のいずれかに該当する場合で,人目につく程度以上のものを言います。

a. 頭部にあっては,鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損
b. 顔面部にあっては,10円銅貨以上の瘢痕又は長さ3センチメートル以上の線状痕
c. 頸部にあっては鶏卵大面以上の瘢痕

(4)上肢下肢の手のひら大を超える瘢痕
上肢あるいは下肢の手のひら大を超える瘢痕,つまり手のひらの大きさの3倍以上を残して特に著しい醜状と判断される場合には,12級相当となります。


(5)日常露出しない部位の醜状
①日常露出しない部位
胸部及び腹部,背部及び臀部を言い,上肢・下肢は含まれません。

②日常露出しない部位の醜状障害
それらの面積の4分の1程度以上の範囲に瘢痕を残すもの→14級相当
それらの面積の2分の1程度以上の範囲に瘢痕を残すもの→12級相当


4 逸失利益も認められますか。  

醜状障害について労働能力喪失があるとして逸失利益が認められるかは,7級12号の著しい醜状であれば基本的には肯定される可能性が大きいですが,それ以外については,個別的な判断によっています。
また,男性については,議論があるところです。

一般論としては,性別,年齢,職業等を考慮した上で,

①醜状痕の存在のために配置転換させられたり,職業選択の幅が狭められるなどの形で,労働能力に直接的な影響を及ぼすおそれがある場合には逸失利益は認められます。

②労働能力への直接的な影響は認め難いが,対人関係や対外的な活動に消極的になるなどの形で,間接的な影響を及ぼすおそれが認められる場合には逸失利益は否定されるものの後遺障害慰謝料の加算事由とするとされます。
原則としてその幅は,100万円~200万円程度です。

③直接的にも間接的にも影響を及ぼすおそれが認められない場合には逸失利益は否定し,後遺障害慰謝料の加算事由も否定されます。


 




なお,この醜状障害における逸失利益に関する点は,次の記事もご覧下さい。
醜状障害における逸失利益は認められるのでしょうか。---後遺障害賠償は,むさしの森法律事務所(リンク)

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