Q.高次脳機能障害でいう記憶力と記銘力とは何ですか。
A.
前向健忘とされている受傷後の学習障害に関しては,脳神経学的には記銘力と言われるものです。
つまり,新しく体験した事柄を留めておく能力が記銘力です。
これに対して古いことを留めておくことが記憶力です。
記銘力が障害を受けると新しいことを忘れるようになります。
記銘力が障害を受けても記憶力が障害を受けないこともあり,逆もあり得ます。
高次脳機能障害の判定では4分野の能力に対して行われます。
つまり,①意思疎通能力②問題解決能力③作業負荷に対する持続力・持久力④社会行動能力(協調性等)です。
意思疎通能力は,具体的には記銘・記憶力,認知力,言語力等とされています。
したがって,自賠責が準拠する労災認定基準において,記銘力と記憶力とが並列されています。
医学上の議論では記銘力という表現が必ずしも用いられてはいないこともあります。
ところが,後遺障害認定に当たっては,区別されていることから後遺障害診断書あるいは自賠責提出書類において記銘力障害についてはきちんと記載がされるように注意が必要です。