Q.RSDに対する心因的要素による素因減額をすることはありますか。

[ジストロフィー,交感神経,後縦靱帯骨化症,素因減額,OPLL,RSD]

A.


RSDについては,その認定の困難さに続いて,素因減額の対象となりやすい傾向があると言われます。

確かに痛みを視覚化することは現在の科学ではできませんし,痛みに対する対応は個人差があります。

その点から,心因的要素を理由として,過去において素因減額がなされることが多くありました。


「反射性交感神経性ジストロフィー自体自律神経異常であり,被害者の心因性要素が基盤にある」として,
3割を減額したものが典型と言えます(大阪地裁 平成12年5月17日判決 <出典> 自動車保険ジャーナル・第1371号)。

しかし,RSDの病態自体が,想像ができないような強い疼痛の症状を呈するものであり,このようなRSDの症状自体が精神的に影響を与えることも考えられることから,
素因減額を行うにあたっては慎重な判断が求められるべきです。

「明らかな身体的又精神的な疾患があったことをうかがわせる事実も認められない」かぎりは,素因減額をすべきではありません。
(東京地裁 平成20年5月21日判決<出典> 自動車保険ジャーナル・第1747号)

これは,疾患に当たるべきでない限り素因減額の対象にしないという最高裁後縦靱帯骨化症(OPLL)判決の立場と整合するものです。

心因的要素については,疼痛や,回復に対する不安などの関与がRSDの発現や病態の悪化に影響しているとしても,これはやむを得ないところであり,
心因反応が顕著であり,これがどのように影響したか等,素因減額の個別的客観的根拠を,主張する側が立証すべきであります
(横浜地裁 平成20年6月13日判決<出典> 自動車保険ジャーナル・第1756号)。

その点は,例え,被害者に「転換性障害,身体表現性疼痛障害に当たる」医学的な見解が
出されたとしても,RSDによる痛みにからの心的ストレスによって,心身医学的な治療が必要が生じているということもできるのであり,
素因減額の対象となる疾患とすべきではありません(神戸地裁 平成22年12月7日判決<出典> 自保ジャーナル・第1848号)。

他方で,RSDに特徴的な疼痛には,患者自身の心因的・精神的素因ないし性格的素因が関係していると考えられことも,否定することはできません。
その点で,治療歴あるいは治療期間等から,素因減額をする例もあり得ます(東京高裁 平成23年10月26日判決<出典> 自保ジャーナル・第1863号 素因減額2割)。


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