Q.交通事故におけるハイドロプレーニング現象及びジャックナイフ現象とは,どういうものですか。また,その関係はありますか。
1 ハイドロプレーニング現象
降雨のため路面上に水がたまった高速道路を走行する場合等,路面上の水膜が厚く,かつ,高速度のためタイヤと路面との接地時間が短い場合には,タイヤが水膜を切って路面に接地することができず,水膜上に乗った状態となり,ハンドル操作もブレーキ操作も受け付けなくなることがあります。
これが,ハイドロプレーニング現象です。
2 ジャックナイフ現象
ジャックナイフ現象とは,大型貨物トレーラ(トレーラを牽引するトラクタ)において見られる屈曲して「く」の字に曲がってしまう現象です。
その要因はさまざまなケースがあると言われていますが,連結部が振られてジャックナイフのような形状となり,操縦不能の状態になることを言います。
トレーラとがカプラ(連結用ピン)によって連結された車両は,カプラを中心とするヨーイング(鉛直軸回りの回転)が自由にできるため,運転操作のミスその他何らかの理由により急ハンドルを切ると同時に急ブレーキを掛けたような場合には,トラクタの重心がトレーラの重心とカプラとの延長線上からずれて位置することとなります。
一方,トレーラの慣性力が当初の進行方向すなわちトレーラの重心とカプラとの延長線上に作用し,これがトラクタの重心の右側又は左側を前向きに突くこととなる結果,トラクタが左回転又は右回転を強制され,回転に従ってこのモーメントの相当レバー長が増加するため,トラクタの回転がタイヤの横滑りを伴って一層活発となるために,というジャックナイフを折り畳むのに似た異常挙動となってしまうのです。
3 ハイドロプレーニング現象とジャックナイフ現象
トラクタ後輪(駆動輪)がロックした場合にも,トラクタの挙動が不安定となってジャックナイフ現象を発生することがあります。
このため,この種の連結車にはABSの装備が義務付けられているのですが,タイヤのグリップ限界を超えた場合,ハイドロプレーニング現象を発生した場合等には,ABSはその効果を発揮しないのです。
したがって,ハイドロプレーニング現象がトラクタ後輪に発生すると,ジャックナイフ現象につながることがあるといえます。
高速道路上で,発生した場合には,大事故に結びつきます。
そもそも,ジャックナイフ現象を起こして事故発生となったのか,事故発生によりジャックナイフ現象のような状態を呈しているのか区別がつきにくい場合もあります。
そして,原因と責任の所在が問題となるのです。