Q.ゼブラゾーンを走行してきた車両は,過失割合では,不利に扱われますか。
ゼブラゾーンは,立ち入りについては,安全地帯や立入禁止部分の場合に設けられているような禁止条項や罰則はありません。単に車両の走行を誘導するに過ぎないものです。 1 ゼブラゾーン(導流帯)とは何ですか。 (クリックすると回答)
ゼブラゾーンとは道路に縞模様で書かれた部分をいいます。
問題は,ゼブラゾーン立ち入りが過失相殺率の修正要素となるかどうかです。 3 具体的にはどのようなことですか。 (クリックすると回答)
(1)道路外から道路に進入するため右折する際に,道路のゼブラゾーンの直進車両と衝突した場合 基本過失割合は,道路に進入するため右折の車両80%に対して道路の直進車両20%ですが,これが修正の結果,70~60%対ゼブラゾーン直進車30~40%となります。(判タp279【147】) (2)道路外に出るために右折する場合に道路のゼブラゾーンの直進車両と衝突した場合 基本過失割合は,道路外に出るために右折の車両90%に対して道路の直進車両10%ですが,これが修正の結果,ゼブラゾーン直進車20~30%となります。(判タp282【149】) (3)進路変更する際に,道路のゼブラゾーンの後続直進車両と衝突した場合 ゼブラゾーンに沿って右折車線に進路変更した車両がゼブラゾーンを走行してきた直進車に衝突する場合です。 基本過失割合は,直進車両30%に対して進路変更車両70%ですが,修正の結果,ゼブラゾーン直進車50~40%となります。(判タp291【153】) 4 さらに,判タに例示されていない場合については,どう考えられますか。(クリックすると回答)
①片側1車線道路のゼブラゾーンを直進中の自動二輪車と一時停止道路から右折進入の加害車両については,双方50%とする ゼブラゾーンには車両をみだりに進入させるべきではなく,これは二輪車であっても同様であると考えられることからすれば,このような走行をする車両があることは通常想定し難いものであるから,事故の発生に相当程度寄与していると認められる。 基本過失割合は二輪車85%に対して右折車両15%であるところ(判タp349【205】),相当厳しい修正です。「ゼブラゾーンには車両をみだりに進入させるべきではない」ということからです。 本件事故現場付近のゼブラゾーンは,前方で増設される車線に円滑に車両を誘導するために設けられたものであって,その通行が禁止されていないとはいえ,ゼブラゾーンの部分を通常の車線と同様に車両が走行することは想定されていない。 基本過失割合は,歩行者35%であるところ(判タp177【83】),20%歩行者に有利に(車両に不利に)判断しました。「ゼブラゾーンの部分を通常の車線と同様に車両が走行することは想定されていない。」という理由からです。
しかし,民事賠償においては,ゼブラゾーンを走行していた車両(自動二輪車を含めて)に対して基本過失割合よりもさらに修正要素として10から20パーセント加算されて,不利に扱われます。
交差点等において通行する車両の安全かつ円滑な走行を誘導されるために設置されるもので,立ち入りについては安全地帯や立入禁止部分の場合に設けられているような禁止条項や罰則はありません。
「過失相殺率の認定基準」(別冊判例タイムズ38号)では,修正要素として,10から20パーセント不利に扱うとしています。
次のケースが想定されます。
(1)道路外から道路に進入するため右折する際に道路のゼブラゾーンの直進車両と衝突した場合
(2)道路外に出るため右折する際に道路のゼブラゾーンの直進車両と衝突した場合
(3)進路変更する際に,道路のゼブラゾーンの後続直進車両と衝突した場合
結論としては,いわば抜け駆けのようにゼブラゾーンをあえて通行した車両の運転者には,交通秩序を乱すものとして,ある程度非難すべきものがあるとして,おおむねゼブラゾーンを進行した車両に不利に10~20%修正をするとしています。
この場合も,車両の運転者等の意識としても,みだりに進入すべきではないとされているのが一般的であることから,おおむねゼブラゾーンを進行した車両に不利に10~20%修正をするとしています。
大阪地裁 平成24年9月27日判決
<出典> 自保ジャーナル・第1890号
②横断歩道付近の道路を横断してきた歩行者に道路を直進してきた車両が衝突
歩行者15%加害車両85%
それにもかかわらず,被告は,あたかもゼブラゾーンを1つの車線であるかのようにその開始地点から特に速度を調節することもなく走行して本件事故を惹起したのであるから,被告には著しい過失がある。
横浜地裁 平成27年1月29日判決
<出典> 自保ジャーナル・第1942号