Q.傷害慰謝料(=入通院慰謝料)に赤い本での別表ⅠとⅡの違いは何ですか。頚椎捻挫(むち打ち)は,どちらになりますか。
傷害慰謝料とは症状固定までの治療期間(入通院慰謝料)に対応した慰謝料です。
赤い本においては,通常の傷害に適用される「別表Ⅰ」を原則として,むち打ち等で他覚的所見のない場合には,「別表Ⅱ 」を適用するとされています。
別表ⅠとⅡでは,金額が異なっており,入通院期間によりますが,同じ期間でもⅡはⅠの約6から7割となっています。
なお,赤い本とは日弁連交通事故相談センター編「交通事故損害額算定基準」による訴訟基準です。
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1 傷害慰謝料
症状固定までの治療期間(入通院慰謝料)に対応した慰謝料です。
この点で,症状固定時点での後遺障害に対応した後遺傷害慰謝料とは,区別されています。
2 傷害慰謝料におけるトリプルスタンダード
裁判基準(あるいは訴訟基準,局面によっては弁護士基準),自賠責基準,任意保険基準のトリプルスタンダードがよく言われています。
なお,裁判基準といっても,裁判所の統一基準ではなく,日弁連交通事故相談センター編「交通事故損害額算定基準」(いわゆる赤い本),また,日弁連交通事故相談センター東京支部編「損害賠償額算定基準」(いわゆる青い本)が,裁判所において実質的な慰謝料額基準となっていることからの俗称です。
自賠責基準とは,平成13年金融庁・国土交通省告示に基づく「支払基準」であり,赤い本等にも資料として掲載され,インターネットにより検索することができます。
任意保険基準とは,過去には任意保険会社としての統一基準がありましたが,独占禁止法のカルテルとしての疑義が生じたという理由で,現在は各社毎の基準となっています。
一般には公開されず,弁護士が入った交渉でも明らかにはされません。
赤い本や青い本よりも低く,自賠責の支払基準での提案も珍しくはありません。
3 別表ⅠとⅡ
傷害慰謝料については,基準化,定額化が図られており,その点での公平性と平等性が担保されています。
赤い本においては,さらに,通常の傷害に適用される「別表Ⅰ」を原則として,むち打ちで他覚的所見のない場合には,「別表Ⅱ」を適用するとされています。
4 別表Ⅰの通院実日数の意味
原則として,入通院期間を基礎として使用する。とありますが,
さらに例外として
「通院が長期にわたり,かつ不規則である場合は実日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることがある。」(2017年版ではp176)としています。
単純に暦の期間を前提にしないと言うことです。
この場合の「長期にわたり,かつ不規則」という点の説明は赤い本には特にありませんが,一般には,長期とは1年以上とされています。
5 別表Ⅱの通院実日数の意味
別表Ⅰとは,表現が異なります。
「この場合,慰謝料算定のための通院期間は,その期間を限度として,実治療日数の3倍程度を目安とする。」としています。
つまり,別表Ⅰでは例外であった実日数で修正することが逆に「原則」とされています。(2017年版ではp176)
例えば,平成29年1月から6月まで通院実日数では50日間であれば,50日間×3の150日間,つまり5ヶ月となります。