Q.車両対車両の交差点内の事故において,押しボタン式歩行者用信号機の色は,どのように過失割合に影響しますか。
押しボタン式歩行者用信号機は,法令上では車両同士を規制するものではありません。
しかし,歩行者用信号機が青色で車両用信号機が赤色の場合においては,それに従う信頼を保護することから基本過失割合を7:3とすることが示されています(別冊判例タイムズ38「過失相殺率の認定基準全訂5版」p224,225)。
車両用信号機側が70%です。
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1 押しボタン式歩行者用信号機とは
交差点で,一方のみに,車両用の信号機があり,他方には信号機がなく,歩行者用横断歩道と共に,押しボタン式歩行者用信号機があるというものがあります。
そして,一方の車両用の信号機は常時青色で,押しボタン式歩行者用信号機を押した場合にのみ赤色に変わる仕組みになっています。
この場合に,歩行者用信号機が青色であることを信頼して進入した車両と,車両用の対面信号は赤色であるものの,進入した車両との過失割合が,問題となります。
2 考え方
(1)歩行者用信号機の法律的扱い
歩行者用信号機は,横断歩道を通行する歩行者と普通自転車のみが規制されて交差道路を通行する車両に対しては規制は及ばないことに法令上はなっています(道路交通法施行令2条5項)。
そのために,その場合には,車両は信号機の規制がないことになり,信号の色にかかわらず,直進右折左折ができることになります。
(2)基本的過失割合
「車両用信号機が赤色を表示しているとき(すなわち,押しボタン式歩行者用信号機が青色を表示しているとき)は,車両が本件道路の停止線又は本件横断歩道を越えて進行してくることはないと信頼して走行するのが通常であると考えられ,この信頼は法的に保護されるべきものである。」(東京地裁 平成14年11月28日判決,東京高裁平成15年6月19日判決)ため,車両用信号機が赤色,押しボタン式歩行者用信号機が青色の場合には,基本過失割合を7:3とすることが示されています(別冊判例タイムズ38「過失相殺率の認定基準全訂5版」p224,225)。
(3)修正要素
そして,一時停止規制があり,一時停止後に押しボタン式歩行者用信号機が青色にしたがって進入した場合には,さらに15%減じる修正がされて,85(車両用信号機赤側):15(押しボタン式歩行者用信号機青側)となるとされています。