Q.自転車同士の追越事故で、傘差し運転をしていた側の過失は、どのようになりますか。

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A.

傘差し運転自体が、自転車を不安定とさせる危険な行為です。
その上で追越をして事故を起こせば、追越側に一方的な過失があるとされる場合が多いと考えられます。追い越される側からすれば防ぎようがないからです。

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1 自転車の傘差し運転
自転車の傘差し運転は、危険です。
それは、片手運転となるからです。平成27年道路交通法改正で自転車運転ルールも厳しくなりました。
ところが、直接に片手運転を禁止している条文はありませんが、安全運転義務(道路交通法71条6号)として各都道府県公安委員会で定めることができますから、その違反となります。

最近の判決例でもその点に触れたものとしては、名古屋地裁平成27年9月7日判決(確定)があります。
この判決では、「自転車の場合、傘さし運転により走行時の安定性に劣る状態になることは明らか」と「本件事故に際し原告が転倒したことについては、原告が傘さし運転であったことが影響していることは否定できない」としております。

2  自転車同士の事故で片方が傘差し運転をしていた場合
傘差し運転が原因となって事故が起これば過失は極めて大きいと考えられます。
自転車同士の事故では、対向同士ならば正面衝突、あるいは同一方向ならば追越時の衝突、または、出合い頭衝突で傘差し運転の自転車が大きな過失割合となるでしょう。

自転車が他の自転車を追い越す場合には、追い越される側の自転車(=被追越自転車)と追越自転車は、並んだ状態ができます。
つまり並進状態があります。そして、その後追い越されるわけですから。
そして、事故つまり接触が起こりやすいのは、この並進状態およびその前後です。
被追越自転車からすれば後ろに目はないので、接近されたり並進されたりしてしまうと、手も足も出ない、衝突を回避する手段がほとんどないのです。

夜間、雨が降っている際には、傘差し運転をしたい気持ちは分かります。
しかし、それで追越をした場合にベルで警告をしなければ追い越される自転車には防ぎようがありません。
このような事故態様の場合に、一方的に追い越しした自転車の過失であるとして500万円の損害賠償を命じた判決が出されています。(東京地裁 平成26年3月12日判決(確定))

この判決では、被追越自転車が並進状態になった際に、自分つまり追越自転車の方向へ寄ってきたので接触したとして、自分の過失は小さいと言う主張をしました。要するに、追い越されようとしている自転車がふらついて自分の自転車に寄ってきたので事故が起きたのだと主張したのです。
だが、並進状態前後になれば自転車は、若干ふらつきながら進行せざるを得ないもので接触は避けられないのです。そのために、追い越すためには、少なくともベルを鳴らすなどをして予告をしなければならない。それをしなかった追越自転車の一方的な過失と断じたのです。

ところで、傘差しをしてベルを鳴らすというのは、両手しかない状態ですから、実際には不可能ですね。上手くやれば傘を持った手でベルを鳴らせるかもしれませんが、不安定になり転倒するかもしれません。
要するに、雨で傘差しをしている場合にはみだりに追越をするなと言うことになります。

もっとも、傘差し運転ではなく、雨合羽で両手運転というのがベストですが。

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