Q.示談書に,後遺障害については自賠責手続きで自賠責保険を受領し解決するという文言を入れた場合には,自賠責保険金を超える賠償請求はできなくなるのでしょうか。
A.
後遺障害申請手続き前かあるいは認定結果待ちの場合において,症状固定日までの慰謝料・休業損害等についてだけ,まずは示談をすることがあります。
事故により経済的な問題が生じている場合も多く,一時的にも支払いを受けることは妥当です。
しかし,その際に,質問のような合意文書を入れられることがあります。
その文言からすれば,後遺障害が認定されたとしても自賠責保険金額を超える賠償額については,請求できないことになります。
だが,自賠責保険金が損害賠償額を充たすものではなく,むしろ十分ではありません。
そのことからいえば,この合意の文言は,自賠責保険金額を超える賠償額については請求を放棄する意味となります。
被害者として,この文言により請求を放棄する意思が本当にあったのか,実際には疑問となります。
加害者側(実際には保険会社)として賠償額の見込み,そして過失割合を説明して,その上で自賠責保険金を超える賠償額となる見込みがないことを被害者として納得したといえる場合でなければ,そのような意思があったとは認められないと考えられます。
従って,判決例(東京高裁昭和63年2月17日,東京地裁平成7年7月26日)も同様に解釈しています。
そこで,被害者としては合意文言に拘束されずに自賠責保険金以上の請求はできるといえます。