Q.交通事故における交叉的不法行為とは何ですか。
A.
一つの交通事故で,お互いに損害が発生して,過失もある場合には,お互いに相手に対する損害賠償請求権を取得します。
すると,それぞれの損害賠償請求権の金額を対当額で相殺をしてしまって差額を支払った方が簡便に思われます。
しかし,民法は,不法行為による損害賠償請求権の相殺を禁止しています(民法509条)。
このことは,訴訟では,大きな意味を持っています。
たとえば,原告が被告に対して1000万円の損害賠償を請求している場合に,被告も原告に対して400万円の損害賠償請求権を持っているとします。
この400万円については原告が起こした訴訟(これを本訴といいます。)で相殺を抗弁として主張して差額の600万円の範囲内での問題にしようとしてもできないのです。
この場合には,被告は400万円について別の訴訟を本訴の原告に対して起こさないといけません。これを反訴といいます。
したがって,原告の被告に対する1000万円の損害賠償請求訴訟(本訴)と被告の原告に対する400万円の損害賠償請求訴訟(反訴)が併合されて判断されることになります。
ただし,双方が合意して相殺することは認められており(相殺の合意),訴訟上の和解でも同じ取り扱いとなります。