Q.頚椎骨折と頚髄損傷との関係はありますか。
必ずしも,頚椎骨折=頚髄損傷とはなりません。
ところで,頚椎はC1~7(8)まであります。特にC1と2が重要です。
C1(第1頚椎)は環椎と呼ばれており,頭蓋骨を支えているものです。
C1レベル環椎骨折で脊(頚)髄損傷を起こすと即死の可能性があります。骨折程度が重症ではなく,脊(頚)髄損傷も起こさなければ,不幸中の幸いと言うべきです。
しかし,骨折後の癒合が不全で変形治癒となると11級7号(脊柱の変形)に該当します。
また,頚部は,回旋運動の制限のみしか生じないとされています。すると,回旋の参考可動域角度(左右合計)120度の2分の1以下,つまり60度以下に制限された場合には,脊柱の運動障害として8級2号となります。
C2(第2頚椎)は軸椎と呼ばれており,名前の通り,軸として頭部を回転させるもので,柱状に伸びている突起(歯突起と言います。)が,特徴です。
C2レベル軸椎骨折には,突起=歯突起の骨折(歯突起骨折)と頚椎に垂直方向に力が加わって椎体と椎弓が離される骨折(Hangman骨折,絞首刑骨折)とがあります。
C1レベル環椎骨折と同じ,11級7号(脊柱の変形)の可能性と,運動障害があれば8級2号となる可能性があります。しかし,Hangman骨折の名前の通り,命に関わる可能性が高いと言えます。
C3以下は椎骨としては,同じかたちのものが連結しています。これらが骨折するのは,頚椎が本来の動く範囲,つまり可動域の限界を超えて,極端に曲げられたり伸ばされたりする(過屈曲・過伸展)による骨折があります。
本体そのものである椎体が圧迫骨折する危険性があります。この場合には,特に頚髄損傷となる可能性が高いと言えます。
救命されても,重度あるいは中等度の後遺障害を残す場合の多くは,これらのC3以下の骨折の場合と言えます。
軽度にして骨折が癒合したものの頚椎の不安定性が残存した場合には,11級7号(脊柱の変形)の可能性があります。