Q.逸失利益の計算で基礎収入として賃金センサスの平均賃金が適用された最近の判決例はありますか。
実収入が賃金センサス平均賃金に達していない場合に,そのまま実収入通りで逸失利益が認定されたならば賠償金額がかなりひくくなってしまいます。
しかし,若年者(概ね30歳未満)については,将来性ということから実収入を超えた金額を基礎収入とすることが最近においても認められています。
【事案の概要】赤い本2017年版p95の判決例
26歳男子専門学校卒会社員が、平成22年10月24日午前8時6分頃、千葉県山武郡内の交差点を自動二輪車で直進中、右折してきた被告運転の普通貨物車と衝突して、頸椎骨折、右橈骨遠位端骨折及び両側肺挫傷等で20日入院、50日通院で自賠責11級7号脊柱変形等併合10級後遺障害を残したものです。
判決は平成22年の年収が231万6,840円(但し,事故後は就労不能のために年度途中まで)であったところ,逸失利益の基礎収入として458万8,900円としたものです。
【判決】
東京地裁 平成27年2月24日判決(確定)
事件番号 平成26年(ワ)第2058号 損害賠償請求事件
<出典> 自保ジャーナル・第1947号
(平成27年8月13日掲載)
①原告は昭和59年2月生まれであり、本件事故時26歳であったこと、
②原告は、大学を中退してE専門学校で学び、平成19年4月1日、23歳でD会社に就職したこと、
③原告の平成22年度の収入は、231万6,840円であるが、本件事故による休業がなかったものと仮定すると、約285万円となること(231万6,840円÷297×365)が認められる。
原告の年齢、経歴、実収入額を総合すると、原告には、賃金センサス男性高卒全年齢平均収入を得る蓋然性があったものと認められるから、逸失利益算定の基礎収入としては、平成23年度の同収入458万8,900円を採用するのが相当である。(しかし)原告において、賃金センサス学歴計全年齢平均収入526万7,600円を得る蓋然性があったと認めるに足りる証拠はない。