Q.骨盤骨折は,どのように分類されますか。その中で後遺障害(後遺症)となるのはどのようなものですか。

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A.

骨盤は,骨盤輪という輪っかがメインです。
そして,ちょっとやそっとでは,壊れません。
しかし,輪っかが切れると困ります。
骨盤の破綻です。

さらに,その輪っかが,二カ所以上で壊れると,重症になります。
また,骨盤骨折には,出血性ショックを伴って適切な初期対応がされないと重症化する場合と,剥離骨折のような軽症例とがあります

1 骨盤の構造はどうなっていますか。  (クリックすると回答)

骨盤の構造は,仙骨を後側の中心として仙腸関節を構成して,その両側に腸骨があり,恥骨・坐骨から前側の恥骨結合までを骨盤輪を形成しています。

そして前側には寛骨がありその中に大腿骨が納まって股関節を構成しています。

2 骨盤骨折の分類はどうですか。 (クリックすると回答)

Key&Conwellの骨盤骨折分類が有名です。

Ⅰ型 骨盤輪の連続性に破綻のない骨盤骨単独骨折
Ⅱ型 骨盤輪の1カ所の骨折
Ⅲ型 骨盤輪の2カ所の骨折
Ⅳ型 寛骨臼の骨折

なお,「Ⅲ型 骨盤輪の2カ所の骨折」が最も重症化しやすいと言われています。
つなり,骨盤の輪っかが切断されたことになるからです。
泌尿器,生殖器を含む他臓器の管理や,大量出血の危険性が高いと言われています。

3 Ⅰ型 骨盤骨単独骨折はどうなりますか。 (クリックすると回答)

(1)骨盤部剥離骨折腸骨,坐骨に起こりやすく,成長期の特に若い男性に多いとされています。運動をした際の急激な筋収縮に伴って発生するとされています。
交通事故では,まずありえません。

【後遺障害(後遺症)】
特に考えられません。

(2)恥骨骨折あるいは坐骨骨折
転倒あるいは尻餅をついて発症します。
痛みがありますが,安静で軽快するものがほとんどとされています。

【後遺障害(後遺症)】
通常は,特に考えられません。
但し,変形が骨折後に残った場合には,骨盤骨に著しい変形を残すものとして12級5号。

(3)腸骨骨折
直接外力が加わると発症します。

【後遺障害(後遺症)】
通常は,特に考えられません。
但し,変形が骨折後に残った場合には,骨盤骨に著しい変形を残すものとして12級5号。

(4)仙骨骨折あるいは尾骨骨折
尻餅をついたり,打撲などの直接外力が加わると発症します。
レントゲン写真でも骨折を見つけることは難しいとされています。
尾骨骨折は,ときには,頑固な痛みを残すことがあるとされています。

【後遺障害(後遺症)】
通常は,特に考えられません。
但し,痛みが残った場合には,12級13号(局部に頑固な神経症状),14級9号(局部に神経症状)。

仙骨に変形が骨折後に残った場合には,骨盤骨に著しい変形を残すものとして12級5号。
なお,尾骨の変形は,尾骨が骨盤骨に含まれないために該当しません。

4 Ⅱ型 骨盤輪の1カ所の骨折は,どうなりますか。  (クリックすると回答)

恥骨・坐骨の同時に発生する骨折は,骨盤骨折の中でも最も頻度が高いとされています。
骨盤輪は安定して,輪っかは保たれているため,安静にしておけば治癒するとされています。

【後遺障害(後遺症)】
通常は,特に考えられません。
但し,変形が骨折後に残った場合には,骨盤骨に著しい変形を残すものとして12級5号。
なお,尾骨の変形は,尾骨が骨盤骨に含まれないために該当しません。

5 Ⅲ型 骨盤輪の2カ所の骨折は,どうなりますか。  (クリックすると回答)

重症化しやすい骨折です。

Pennalらによって分類がされています。
その分類の観点は,骨盤輪に対して加わった外力によるものです。
3種類に分類されています。
(1)前後方向からの圧迫力
(2)側方からの圧迫力
(3)垂直方向への剪断力

(1)前後方向からの圧迫力
恥骨結合の離開(注:結合部分が離れてしまうこと)が生じて,靱帯の損傷も起こります。キャンパス懸垂帯での治療が用いられます。
尿道損傷を発症することがあります。

(2)側方からの圧迫力
後方部分の不安定性が問題となります。
後方部分の骨癒合がうまくいかない可能性があります。
後方部分の内固定術をすることもあります。

(3)垂直方向への剪断力
高所からの転落などで起こるものです。
前方も,後方も骨折して,特に後方の骨折は転位して(=骨折のために骨折面がずれてしまって)骨盤輪の破綻が激しいものです。
いわゆるマルゲーニョ骨折Malgaigne骨折です。
この場合に,骨盤輪の変形治癒を残して後遺障害(後遺症)となる可能性が高いとされています。

☆floating hip 浮いている腰
骨盤輪あるいは寛骨の不安定な骨折に加えて,大腿骨の骨折を合併している場合のことです。多発すると言われています。
坐骨神経麻痺を併発することが確率的に高いと言われています。

【後遺障害(後遺症)】
通常は,特に考えられません。
但し,変形が骨折後に残った場合には,骨盤骨に著しい変形を残すものとして12級5号。

女性の場合に骨折後に産道が狭窄し正常分娩が困難となった場合には,11級10号(胸腹部臓器の機能障害)。
但し,12級5号との併合はできないとされています。

男性の場合に,神経損傷等で射精障害あるいは勃起障害が生じることになった場合には,生殖機能に著しい障害を残すもの,つまり,生殖機能は残存しているものの,通常の性交では生殖を行うことができないもの→9級17号(生殖器に著しい障害を残すもの)
生殖機能に軽微な障害を残すもの,つまり,通常の性交で生殖を行うことができるものの,生殖機能にわずかな障害を残すもの→13級準用

恥骨・坐骨の同時に発生する骨折は,骨盤骨折の中でも最も頻度が高いとされています。
骨盤輪は安定して,輪っかは保たれているため,安静にしておけば治癒するとされています。

【後遺障害(後遺症)】
通常は,特に考えられません。
但し,変形が骨折後に残った場合には,骨盤骨に著しい変形を残すものとして12級5号。
なお,尾骨の変形は,尾骨が骨盤骨に含まれないために該当しません。

6 寛骨臼骨折は,どうなりますか。(クリックすると回答)

衝撃によって大腿骨骨頭がハンマーのように骨盤の寛骨に力を加えて発症するものです。
股関節の内面を傷つけるものですが,骨癒合は良好とされています。
しかし,しっかりと整復できないと変形性関節症となりやすいために,観血的整復内固定術が行われることも多くあります。
また,大腿骨の人工骨頭置換術あるいは人工関節術の対象となる可能性もあります。

【後遺障害(後遺症)】
変形が骨折後に残った場合には,骨盤骨に著しい変形を残すものとして12級5号。
股関節機能障害(可動域制限)の場合には,
用廃は8級7号 著しい障害は10級11号 障害は12級7号

大腿骨の人工骨頭置換術あるいは人工関節術の場合に,
可動域制限が2分の1以下なら8級7号,2分の1以上なら10級11号
なお,股関節固定術に際して骨盤より採骨された場合で用廃となれば8級7号と12級5号とを併合して7級となる可能性があります。

7  股関節脱臼・股関節脱臼骨折は,どうなりますか。(クリックすると回答)

交通事故による場合が増加しています。
股関節の脱臼・脱臼骨折は,大腿部骨頭が股関節から脱臼あるいは脱臼骨折することを意味しています。

分類すると,
ア 大腿骨頭が単独で脱臼する
この場合は,股関節前方脱臼と股関節後方脱臼に分類されます。
およそ10%対90%と後方脱臼が多くなっています。

イ 骨盤骨あるいは大腿骨の脱臼骨折を伴うもの
以下の3分類です。
(1)大腿骨頭・頚部骨折
(2)寛骨臼(骨盤骨についている骨)骨折
(3)(1)+(2)

ウ 合併症
(1)大腿骨頭壊死
(2)外傷性変形股関節症
→これらの場合には,人工骨頭置換術となります。

(3)坐骨神経麻痺(まれにおこります)

【後遺障害(後遺症)】
大腿骨の人工骨頭置換術あるいは人工関節術の場合に,
可動域制限が2分の1以下なら8級7号,2分の1以上なら10級11号

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