Q.頭蓋骨骨折の種類と症状には,どのようなものがありますか。
A.
頭蓋骨骨折の種類及び症状は,以下のようなものです。
1 線状骨折,陥凹骨折,粉砕骨折,縫合離開(離開骨折)に分類されます。
また,骨折の状態には閉鎖性と開放性(複雑性)とがあり,開放性陥凹骨折は,外気と直に接しているため,すみやかな感染予防が必要です。
2 骨折線が中硬膜動脈を横断している場合には急性硬膜外血種の発生があり得ます。
中硬膜動脈は,側頭葉底面を支える中頭蓋窩を通っています。
3 骨折線が矢状縫合やラムダ(人字)縫合にかかる場合には静脈洞損傷のおそれがあります。
頭蓋の円蓋部は,前頭骨,側頭骨,頭頂骨,後頭骨などの複数の骨で構成されています。
骨同士は,矢状縫合,ラムダ(人字)縫合,冠状縫合,鱗状縫合などの縫合が形成されています。
矢状縫合は頭頂骨に,ラムダ(人字)縫合は後頭骨に位置しています。
脳の静脈は,他の身体部位の静脈とは異なり逆流防止の弁がなく,脳表や脳実質内を走行して最終的に硬膜の内膜と外膜との間に形成される静脈洞へ還流しています。
静脈洞損傷が生じると,静脈洞血栓症(外傷性静脈洞閉塞)となり,手術を要することになります。
4 視神経管骨折
前頭蓋底骨折の特異な形として視神経管骨折があります。すなわち骨折が視神経管まで延びて,骨折縁や骨片によって視神経が圧迫されると視神経損傷をきたして,受賞直後から急速に視力障害が生じます。
前額部,特に眉毛外側を打撲した場合に多く起こるとされています。眼鏡様皮下出血,いわゆるパンダの目がある場合には,要注意とされています。
5 眼窩吹き抜け骨折
眼部に前方からの強い衝撃があった場合に,眼窩内の急激な圧上昇により,眼窩内の脆弱な骨が吹き抜けたように骨折するものです。眼窩縁の骨折を伴うものとそうでないものとがあります。
目に関する様々な症状および後遺障害が生じますが,垂直の眼球運動障害による複視,三叉神経の障害による感覚障害が典型的です。
6 頬骨骨折
頬骨弓単独骨折は比較的稀であり,ほとんどが頬骨に上顎骨頬骨突起を含んだ骨折であり,典型的には頬骨前頭突起,眼窩下縁,頬骨弓が同時に骨折して頬骨体部が陥没する三脚骨折といわれるものが多いとされています。
頬部の扁平化,眼位異常,といった顔面の変形,顎運動制限による咬合障害,感覚障害などの症状および後遺障害が生じます。
7
外傷性脳動脈瘤(外傷性頭蓋内動脈瘤)
発症は比較的稀ですが,通常の動脈瘤と比較して予後が悪く破裂例の半数が死亡するともいわれております。
受傷機転としては,閉鎖性頭部外傷,頭蓋骨骨折があります。
8 外傷性頚動脈海綿静脈瘻(traumatic
carotid-cavernous fistula : 外傷性頚動脈海綿静脈瘻)
内頚動脈は海綿静脈洞内を通過していますが,外傷によって洞内に断裂が起こることにより生じる動静脈瘻です。なお,動静脈瘻とは動脈瘤の亜型であり,毛細血管を経ることなく動脈と静脈とがつながってしまったものをいいます。
頭蓋底骨折を原因とするものが大半であるとされています。眼球突出などの目に関する書状が特徴です。現在では脳血管内手術が可能とされていますが,予後については,楽観できないとされているようです。