Q.頚椎椎間板ヘルニア・腰椎椎間板ヘルニアの診断を受けた場合に,賠償に有利ですか。不利ですか。
A.
医師は,傷病名として頚椎・腰椎椎間板ヘルニアとすることが多くあります。
しかし,賠償としては,その傷病名故に等級が常に上がり増額があるとは限りません。
ヘルニアそのものを争われたり,あるいは,ヘルニアであることがむしろ減額の対象として不利に働くこともあるので注意が必要です。
1 一般的な椎間板ヘルニアの診断基準とは,どのようなものですか。
一般的に臨床診断(頚椎,腰椎共通)に次のものがあることです。
①画像検査でヘルニアの箇所と状態が観察できる
②神経学的所見,つまり臨床症状・所見が認められる。
③①と②に整合性があると確定診断となる。
2 賠償側(保険会社側)の基本的スタンスは,どうですか。
賠償側の基本的スタンスは次の通りと思われます。
頸椎(頚椎)に関しては
(1)レントゲン写真では,40歳を過ぎるとほとんどすべてに加齢性変化が見られ,頸椎(頚椎)椎間板症等が潜在している。
(2)MRI所見に言う椎間板変性や脊髄圧迫は健常者にも見られ,頸椎(頚椎)捻挫に関するMRIの診断価値は低い。
という前提に立っています。
腰椎についても「30歳代後半以降では無症状でも約50%にMRIで腰椎椎間板ヘルニアが認められる。」ということを前提にしています。
3 どうすればいいのでしょうか。
賠償側(保険会社側)の基本的スタンスとして,二つの点が指摘できます
第1点は,画像所見から被害者を担当した医師がヘルニアと診断したことをヘルニアではないと争うスタンスであると言うことです。
第2点は,普通一定の年齢以上ならばヘルニアになっていてもおかしくはないのであるから,交通事故により発症したことを争うスタンスであると言うことです。
この点からも,十分に対応して主張立証する必要があります。
言葉のマジックのような話ですが,賠償においてヘルニアは,その存在が他覚所見として14級が12級にあるいはそれ以上に後遺障害認定される要因となるプラスの面があり,その点からヘルニアであることを賠償側は否定しようとします。
他方で,素因減額という面から賠償側はヘルニアが外傷によらず,既に無症状であっても存在していたことを主張立証しようとする面もあります。
被害者とすると痛し痒しの面がありますが,しっかりと証拠を分析して行く必要があります。