Q.事故後の死亡が外傷性てんかんによる場合には,因果関係は認められますか。
「てんかん重積状態」となっている場合において,死亡と事故との因果関係を認めることは可能だと考えられます。
てんかん重積状態とは,発作がある程度の長さ以上続くか,または短い時間でも反復し,その間の意識の回復がないものと定義されています。
持続時間については,30分以上とするものが多いようですが,10分あるいは5分以上続けば治療を始めるように推奨する報告もあるようです。
重積状態について,さらに厳密には,発作が遷延し30分以上連続して生じるか,あるいは個々の発作は通常の時間内に停止しても,意識が回復する前に次の発作が反復し,そのような状況が30分以上持続することを言います。
重積状態の中でも全身けいれん型は,救急事態であり,治療の遅れが重篤な脳障害に至ることがあります。
特にけいれん性てんかん重積状態とは全般強直-間代発作が頻回に見られ,けいれん終了後に意識回復前に次の大発作が生じるもので,その致命率は10~20%とされています。
重積状態となり発作によって死亡に至ると言うことから,死亡との因果関係は認められることが多いと思われます。
さらに,重積状態は脳損傷の重篤程度に関連するともされており,脳損傷が重度であれば重積による死亡リスクは高まる関係にあるとも言えます。
なお,頭部外傷による後遺障害1級1号と認定されながらも,てんかん重積により,死亡した場合においては,事故と死亡との因果関係が争われることがあります。
外傷性てんかん・てんかん重積・死亡と一連の因果関係が肯定されたならば,死亡の損害賠償額が認められます。認めた例として東京地裁 平成23年8月9日判決 <出典> 自保ジャーナル・第1859号。