Q.上腕骨遠位端骨折とは何ですか。後遺障害(後遺症)になりますか。

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A.

肘関節部の骨折です。
後遺障害としては,可動域制限による運動障害及び長管骨の変形障害(12級8号)が考えられます)。
あるいは不幸にしてフォルクマン拘縮が進行して手関節・手指の用廃となると8級6号の可能性があります。

1 上腕骨遠位端骨折(クリックすると回答)


上腕の肩から遠い部位の骨折です。遠位端とは,肩から見て遠い端という意味です。
上腕骨下端部骨折とも言います。
要するに,肘関節部の骨折です。

肘関節は,肩から伸びている上腕骨と手指に繋がる尺骨・橈骨を結ぶものです。
つまり,上腕骨遠位端と尺骨及び橈骨近位端から構成されています。

従って,肘関節部の骨折は,
1.上腕骨遠位端骨折
2.肘頭骨折
3.橈骨近位端骨折
に分かれます。
この上腕遠位端骨折は肘付近の骨折の中でも最も肩に近いものです。

2 上腕骨遠位端骨折の分類(クリックすると回答)


骨折の部位によって
(1)上腕骨顆上骨折
(2)上腕骨外(橈側)顆骨折
(3)上腕骨内側(尺側)上顆骨折
(4)上腕骨遠位部粉砕骨折

等に分類されます。

(1)上腕骨顆上骨折
上腕骨の最も方から遠い,つまり遠位端は尺骨・橈骨と肘関節で連結しています。
その上腕骨の遠位端背側面を上腕骨顆といいます。
上腕骨顆周囲の骨折を言います。

(2) 上腕骨外(橈側)顆骨折
上腕骨の遠位端腹側の先端は上腕骨小頭と上腕骨滑車を含む上腕骨外側顆部と呼ばれています。ここの部分の骨折です。
手のひらを前に向けると親指側,つまり橈骨側が外側になります。
そこから上腕骨外側顆部は,上腕骨橈側顆部とも呼ばれ,その骨折は上腕骨橈側顆骨折となります。

骨片が大きいことや転位のあることも多いと言われています。

(3) 上腕骨内側(尺側)上顆骨折
上腕骨顆からみて,そこよりも肩に近い部分を内側上顆,外側上顆といいます。
手のひらを前に向けると親指側,つまり橈骨側が外側になりますが,内側が尺骨側になります。
そのために上腕骨内側上顆は,上腕骨尺側上顆とも呼びます。

(4) 上腕骨遠位部粉砕骨折
肘関節部に対する直達外力により生じるものです。小児とは異なり成人に多い骨折です。

3 後遺障害(後遺症)(クリックすると回答)

後遺障害としては,可動域制限による運動障害はまれとされています。
しかし,長管骨の変形障害(12級8号が考えられます)。

あるいは不幸にしてフォルクマン拘縮が進行して手関節・手指の用廃となると8級6号の可能性があります。
前腕屈筋群の拘縮をフォルクマン拘縮と言います。
その中には手関節の運動あるいは指の運動に必要な屈筋群も含まれており,阻血性のフォルクマン拘縮により用廃となる恐れが出てくるのです。

4 上腕骨遠位端骨折の治療(クリックすると回答)


(1)上腕骨顆上骨折
治療は,保存療法が原則で,全身麻酔による徒手整復術が用いられます。
徒手整復が困難であれば牽引療法がされることもあります。
なお,合併症として橈骨神経麻痺か正中神経麻痺あるいはフォルクマン拘縮が生じることがあるとされます。
整復がきちんとされれば,機能障害はほとんどないとされています。
従って,最も急性期に注意を払うべきはフォルクマン拘縮だとされています。
なお,小児に多い骨折であることから,成長期にかかる故に変形治癒となることがあります。

(2)上腕骨外(橈側)顆骨折
初診時において転位のないものは外固定による保存療法がされ,転位のあるものは,それが大きければ手術的治療がされて問題を残すことはないとされます。
しかし,問題は,初診時に転位があまりない例が多く,その際の診断や処置を誤ると偽関節を生じて,肘関節外側部の成長が障害を受けて外反肘変形となる可能性があることです。
通常は,機能障害を生じませんが,その程度が大きい場合には,成長期を過ぎてから20~40年後に内側の過伸展による遅発性尺骨神経麻痺を生じる恐れがあります。

(3)上腕骨遠位部粉砕骨折
粉砕の強い場合には難治性の骨折と言われています。
しかし,キルシュナー鋼線による締結法での観血的治療によりかなりの改善が期待できるとされています。

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肘関節の可動域制限(リンク)

フォルクマン拘縮(リンク)

手関節の可動域制限(リンク)

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