Q.腕神経叢損傷とは何ですか。後遺障害(後遺症)は,何級ですか。
腕神経叢は,末梢神経の密集しているところですので,その損傷は重症です。
肩関節の可動域制限(リンク) 肘関節の可動域制限(リンク) 手関節の可動域制限(リンク) 手指の可動域制限(リンク)
神経根から引き抜きが生じると,用廃として重度の障害が残ります。
しかし,現在は,神経修復手術や移植手術で多くの場合には,かなりの回復がされると言われています。
鎖骨上部にある神経の密集地帯のことです。
腕神経叢図
2 腕神経叢は,どのような働きをするものですか。(クリックすると回答)
脊椎の中枢神経は,末梢神経として第5頚椎から第1胸椎の椎間孔から出た第5~8頚神経は,途中で枝分かれの上で複雑になっていきます。
腕神経叢は,その分岐点です。
腕神経叢から,さらに末梢神経を分枝して,神経的に上腕全体を支配しています。
3 腕神経損傷というは,どうして起こるのですか。(クリックすると回答)
交通事故による場合には,オートバイにより上肢が不自然な格好で投げ出されたり,頭頚部や肩甲部に牽引力が加わり生じる伸展損傷とされます。
腕神経叢損傷は,末梢神経損傷に分類されますが,重症化すると上肢全体が不自由となるものです。
傷害のタイプでは,鎖骨上損傷でのC5-T1型(第5頚椎-第1胸椎型)と,鎖骨下損傷が重症化しやすい傾向にあるようです。
5 どのような傷害のタイプが重症化するのでしょうか。(クリックすると回答)
神経根の引き抜き損傷は重症であり,治療上は鑑別が重要視されています。
引き抜き損傷以外は,神経移植術・移行術あるいはリハビリによる修復がかなり見込まれるという状況になっています。
(「脳神経外科学」金芳堂 p2321)。
6 末梢神経損傷であっても上肢の運動に影響するのですか。(クリックすると回答)
引き抜かれると,その末梢神経そのものが廃絶されてしまいます。
すると,その神経に対応した上肢の運動そのものができなくなります。
引き抜かれなくても,神経障害で運動に影響が出てきます。
7 そうすると,どの部位の障害が残るかは,損傷を受けた支配神経に対応するものと言うことですか。(クリックすると回答)
神経に対応します。
具体的には,引き抜きがあると,
第5頚神経根=肩関節機能の全廃
第6頚神経根=上腕二頭筋の神経支配がなくなり肘の屈曲が不可能
第7頚神経根=手関節の背屈,指の伸展が不可能
第8頚神経根=それのみでは修復可能。第7頚神経根損傷がある場合には,手関節の屈曲や手指の屈曲の不可能
一つあるいは複数の神経根の引き抜きと残存症状程度により障害される関節が決定され該当等級も対応してきます
8 具体的な後遺障害等級はどうなりますか。(クリックすると回答)
一側上肢機能用廃 → 5級6号
1上肢の2関節の用廃 → 6級6号
1上肢の1関節の用廃 → 8級6号
1上肢の1関節の著しい機能障害 → 10級10号
1上肢の1関節の機能障害 → 12級6号
全型(第5~8頚神経すべて)いうのは,すべての神経の引き抜きがあり,全く修復ができなかった場合に生じます。
しかし,手術中に引き抜きを発見する場合であっても,1,2本が大半(49%)であり,4本の神経根が引き抜かれているのは,6%程度という症例報告もあります
(「脳神経外科学」金芳堂 p2322)
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