Q.ジストニア(ジストニー)とは何ですか。後遺障害となりますか。

[ジストニア,ジストニー,不随意運動,中心性脊髄損傷,中枢性,大脳基底核,素因減額,視床,高次脳機能障害]

A.

ジストニアとは,不随意運動症の1つです。
不随意運動とは自分の意思と無関係に出現する異常な運動の総称ですが,ジストニアは筋肉の緊張の異常によって様々な不随運動や肢位,姿勢の異常が生じる状態を総称するものです。

1 原因としては (クリックすると回答)

(主に)大脳基底核 (リンク)の異常によって起こると考えられています。
しかし,原因が不明なものが多くあるとされています。

2 病態の分類としては (クリックすると回答)

原因が同定(決定)できないものを本態性ジストニア,脳性麻痺,脳卒中,脳炎,先天性代謝異常などの後遺症として起こるものを二次性ジストニアと言います。

あるいは,症状が全身の筋肉が異常に動く全身性ジストニアと局所筋緊張の異常による局所ジストニアに分類されます。

3  交通事故裁判例から (クリックすると回答)

東京地裁 平成21年3月31日判決(控訴中)
事件番号 平成17年(ワ)第7062号 損害賠償請求事件
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1793号(平成21年7月30日掲載)

(1)ジストニア発症について
症状は,中心性脊髄損傷ではないことが認められる。
しかし,他方,鑑定の結果によれば,原告には,筋緊張の亢進と異常姿勢が認められることから,上記症状はジストニアであることが認められる。
そして,そもそも有していたジストニアの疾病素因が,本件事故を契機として発症したものと認めるのが相当である。
(2)原告の後遺障害の程度
原告の高次脳機能障害の症状の程度は,5級2号又は3級3号に相当するというべきである。
そして,左顔面から頸部にかけての不随意運動,構音障害・構語障害,左上下肢から頸部の筋緊張の亢進と異常姿勢及び運動障害等のジストニアの症状も併せると,原告の後遺障害の程度は,後遺障害等級併合2級に相当するというべきである。

(3)ジストニアによる素因減額(寄与度)
ジストニアによる症状は,そもそも有していたジストニアの疾病素因が,本件事故を契機として発症したものと認められることから,損害の公平な分担という見地から素因減額をするのが相当である。
もっとも,高次脳機能障害のみの後遺障害等級が5級2号又は3級3号に相当することを考慮すると,素因減額の割合は2割とするのが相当である。

4 上記裁判例について(趣旨)は (クリックすると回答)

本件事故によりジストニアを発症したものとして,高次脳機能障害にジストニアによる身体性機能障害を加えて併合2級としました。
しかし,ジストニアの発症については素因も影響したとして,素因減額として2割を相当としたものです。

5 上記裁判例における鑑定内容は (クリックすると回答)

鑑定では,ジストニアの発症メカニズムについて次のように述べています。
「本件事故後のCTやMRI画像上,基底核や視床を含め大脳には異常は認められず,SPECTでも基底核や視床には血流の低下は認められないから,原告のジストニアの症状は,大脳の損傷によるものとは考えにくい。

他方,原告は,本件事故後長期にわたり強い頭痛,頸部痛,背部痛,腰痛等を訴えていたことから,脳損傷以外に体の各所(末梢)に直接,間接に障害が起きていたことが考えられ,本件事故後持続する疼痛が認められた近くの部位にジストニアが起きた可能性がある。
そして,原告には遺伝素因はないが,ジストニアの認められる範囲は局所の疼痛部位のみに限局していないことから,原告にはジストニアに対して特殊な中枢性の感受性といったものと想定せざるをえない。
したがって,原告には,ジストニアの疾病素因が存在していた可能性が高く,本件事故が契機になって発症したものと考えられる。」

原因としては,脳損傷は否定して,「特殊な中枢性の感受性といったものと想定せざるをえない。 」ことを挙げております。

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