後遺障害の慰謝料

1.慰謝料について

(1)後遺障害(後遺症)の慰謝料とは

慰謝料とは,あなたが受けた精神的苦痛を金銭的に評価したものです。
そして,後遺障害(後遺症)慰謝料とは,後遺障害(後遺症)により,あなたが精神的に受けた精神的苦痛に対する金銭賠償ということです。
交通事故による後遺障害(後遺症)の慰謝料は,自賠責保険後遺障害等級に従って金額が定まっています。

(2)後遺障害(後遺症)慰謝料のダブル(トリプル)スタンダード

後遺障害(後遺症)慰謝料の金額は,自賠責保険基準と訴訟基準とで違いがあります。さらに,任意保険基準というものがあり損害保険会社(共済)毎で独自の基準を設けております。なお,従前は任意保険基準として文字通り損害保険会社(共済)共通の基準を設けていましたが,カルテルに該当するのではないかという疑問を除くために,会社(共済)毎で独自の基準を設けるようになったと言われています。なお,損害保険会社(共済)毎の独自の任意保険基準については,公開している例はほとんどないように思われます。この様に,同じ後遺障害(後遺症)の慰謝料と言っても,自賠責保険基準と訴訟基準のダブルスタンダードに任意保険基準を加えるとトリプルスタンダードと言う構造になっています。

(3)後遺障害認定等級と慰謝料

以下に,自賠責保険基準と訴訟基準とを示します。単位は万円です。

  1級 2級 3級 4級 5級 6級 7級 8級 9級 10級 11級 12級 13級 14級
自賠責保険基準 1100 958 829 712 599 498 409 324 245 187 135 93 57 32
訴訟基準 2800 2370 1990 1670 1400 1180 1000 830 690 550 420 290 180 110

上段が自賠責保険基準,下段が訴訟基準です。 なお,自動車損害賠償保障法施行令別表第1の場合(高次脳機能障害・脊髄損傷)には,第1級 1,600万円,第2級 1,163万円 となって高めになっています。

この様に,自賠責保険基準と訴訟基準とでは,大きく開きがあります。後遺障害等級にもよりますが2ないし3倍の開きがあると言えます。しかし,これは,自賠責保険が被害者救済のために,すでに申し上げたとおり本来の意味での過失相殺をしないで,最低限の賠償をするという趣旨の制度であるために,金額が控えめであるのは,一定やむを得ないのです。これに対して,訴訟基準は,訴訟手続きを踏まえて場合によれば過失相殺による減額もあり得ることを踏まえて自賠責保険基準よりも高い水準となっているのです。
なお,損害保険会社(共済)毎の独自の任意保険基準については,各社によるので一般的なお話はできにくいのですが,知る限りでは,自賠責基準に近い水準から訴訟基準の6割ないし7割という範囲が多いとは思われます。しかし,個別事案にもよりますが,交渉次第によっては重度後遺障害事例は別として訴訟基準に近い水準での解決が可能な場合もあり得ます。もっとも,常にそうであるとは言えません。
なお,弁護士あるいは法律事務所によっては,後遺障害(後遺症)慰謝料が損害保険会社(共済)の提示額の2から3倍にもなると言うことをうたい文句とするところもままみられます。この後遺障害(後遺症)慰謝料のダブル(トリプル)スタンダードの構造からすれば,訴訟という選択をしたのならば原則として当たり前のことでありますが,訴訟になっても過失相殺がなされれば,その割合によっては大きく減額される可能性があることをご注意下さい。

(4)慰謝料増額事由

(1)加害者に故意もしくは重過失(無免許,ひき逃げ,酒酔い,著しいスピード違反,ことさらに赤信号無視等)または著しく不誠実な態度等がある場合には,慰謝料の増額事由となるとされています。事例としては,死亡事例が多いですが,後遺障害事例においても増額することがあります。例えば,入院532日,通院1201日(実日数420日)の長期治療とリハビリをして足の関節機能障害等の併合8級となった事例で,正面衝突という事故態様にもかかわらず,救護せずに逃走して,刑事裁判で判決後も見舞いに来ると言ったのにも,それを守らなかったとして後遺障害分ではありませんが,治療期間中の傷害分の入通院慰謝料について増額を認めています(大阪地裁平成18年8月30日判決)。
あるいは,左肩関節の機能障害(10級10号),左肩鎖骨の変形障害(12級5号)により,併合9級となった国際資格を取得して今後も従事する予定であったエステティシャン(事故当時34歳女性)が,その仕事に就くことが今後は不可能となったことに加えて,加害者が本件事故当時酒気帯び運転をした上に救護義務および報告義務違反したことを理由として1500万円(9級の後遺障害慰謝料は訴訟基準でも690万円です。)の後遺障害慰謝料が認められました(東京地裁平成18年12月2日判決)。
(2)被害者の親族が精神疾患に罹患した場合,死亡事故に対して認めることが多くはありますが,後遺障害については,認める例は今のところ見当たりません。

交通事故における後遺障害は、その賠償についても深い悩みを抱えることになります。埼玉の弁護士、むさしの森法律事務所にご相談ください。

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