- 1.逸失利益の計算方法
- 2.死亡逸失利益をめぐる問題点
- 3.死亡慰謝料
- 4.死亡慰謝料をめぐる問題
3.死亡慰謝料
(1)慰謝料額のダブル(トリプル)スタンダード
後遺障害慰謝料と同様に,死亡慰謝料は自賠責保険基準と訴訟基準,そしてその中間に当たる任意保険基準があります。被害者救済を目的とする自賠責保険基準と訴訟基準のダブルスタンダードに加えて,各損害保険会社(共済)毎の任意保険基準とのトリプルスタンダードになっています。
自賠責保険基準は,「死亡者自身の慰謝料を350万円とし,慰謝料の請求権者は,被害者の父母(養父母を含む。),配偶者及び子(養子,認知した子及び胎児を含む。)とし,その額は,請求権者1人の場合には550万円とし,2人の場合には650万円とし,3人以上の場合には750万円とする。なお,被害者に被扶養者がいるときは,上記金額に200万円を加算する。」と死亡者固有の慰謝料に請求権者の数及び扶養の有無を考慮した積み上げ方式になっています。
(2)訴訟基準の定額化
[1]一家の支柱 | 2800万円 |
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[2]母親,配偶者 | 2400万円 |
[3]その他 | 2000~2200万円 |
しかし,これは一応の目安で具体的な事由で増減があり得るとされています。
(3)近親者慰謝料について
民法第711条は,死亡者だけではなく一定の近親者固有の慰謝料も認めています。すると,例えば夫を交通事故でなくした妻が夫に発生した慰謝料の相続分に加えて,妻の固有の慰謝料を請求した場合にはどうなるのでしょうか。つまり,上で述べた訴訟基準の死亡慰謝料は,死亡者の相続分だけの慰謝料なのか,それとも近親者慰謝料も含んだ慰謝料であるのかどうかと言う問題です。多くの裁判例としては,特段の事情がなければ,近親者慰謝料を主張したとしても,一家の支柱としては,2800万円を超えることはなく判断されてしまいます。裁判所は,近親者慰謝料を認めるべきかどうかについての問題は,事故態様の悪質な場合に増額を認めるべきとする,慰謝料増額事由があるかどうかで考えていると言えます。