- 1.逸失利益の計算方法
- 2.死亡逸失利益をめぐる問題点
- 3.死亡慰謝料
- 4.死亡慰謝料をめぐる問題
4.死亡慰謝料をめぐる問題
(1)慰謝料増額事由
[1]加害者に故意もしくは重過失(無免許,ひき逃げ,酒酔い,著しいスピード違反,ことさらに赤信号無視等)または著しく不誠実な態度等がある場合には,慰謝料の増額事由となるとされています。後遺障害にもまして,死亡の場合には,これらの点があると,増額が認められ,増額の幅としては,基準額の2ないし3割増しで,最大となると,基準額の1.4倍とも言われています。従って,相続分と固有慰謝料を合計すると,3000万円を超える裁判例も珍しくはありません。
[2]遺族にPTSD等の精神的症状が発症した場合です。親族との死による離別は誰でも悲しいものですが,交通事故の場合には,フラッシュバックを伴うPTSDの症状がかなりの高率でみられると言われています。特に,同じ自動車に同乗していた場合とか,あるいは親の目の前で我が子が死亡した場合にはなおさらだと思います。この場合には,遺族そのものが事故に遭遇したのではないためか,明確にPTSDとの認定までなく,精神科への通院歴等で慰謝料増額を認めている裁判例もあります。この点は,裁判例の検討整理が必要な論点ではあります。
(2)高齢者・幼児に差を設けるべきかについて
3(2)の訴訟基準での[3]その他について,従来は,2000万円でしたが,それが2000~2200万円と幅が持たされました。その他とは,独身の男女,子供,幼児等です。この等の中に高齢者が含まれます。以前の2000万円の基準の中で,子供と,高齢者と同じ金額でよいのかという議論がなされていたことがあります。生命の尊さに変わりはないとしても,ある程度の人生を送ることができた高齢者と,これからの人生を絶たれた子供の場合では,子供に対する慰謝料額が多くてしかるべきだという意見が強くありました。実際にも,裁判例でも,高齢者には2000万円を下回る判決が出る一方で,子供には2000万円を超える判決が出ていたことも事実です。もちろん,これは価値判断の問題で若いときから苦労されて,これから老後を楽しもうという矢先に命を絶たれた高齢者を慰謝するためには2000万円でも足りないという主張も十分合理性があります。しかし,高齢者対子供,特に幼児という図式は極端かもしれませんが,一般論として,幼児あるいは若年者の無念さを少しでも多く慰謝したいと言うことが反映されて一律2000万円ではなく,2000~2200万円という幅ができたのです。この点を踏まえて考えると,その他に該当する,独身の男女,子供,幼児及び高齢者の場合には,死亡者の境遇あるいは遺族の心情の主張立証により増額の可能性があると言えると思います。
☆死亡事案の場合には,いずれにして諸々の論点があります。加害者側からの提案がある場合にそれが妥当かどうか,また,
提案がないばあいには今後どのように対応するかについてか,私どもがお答えして代理して対応していくことが可能です。まずは私どもに御相談ください。