1.時間的流れ
(1) 交通事故が発生して,あなたは負傷をしました。すると,一定の期間入院さらには通院をせざるを得なかったはずですし,現在も通院して治療中かもしれません。また,そのために仕事を休まれたりして休業損害が発生しているはずです。さらに,入院に伴う諸雑費,通院交通費あるいは御家族にも入通院付添に伴う急な費用もかかっていると思います。
(2) 治療の結果として,症状がこれ以上は良くならないという状態になった時に,症状固定となります。しかし,症状固定は,怪我が治ったという意味ではありません。そして,症状固定であるかどうかは,医学的所見と法的判断が交錯しており,加害者対被害者という構造に自賠責及び任意保険制度が係わってきて,難しい問題となりがちで,症状固定なのかどうかをめぐって紛争となりやすいものです。
(3) 症状固定となった後に,後遺症(後遺障害)が判断されます。あなたに現在もなお「痛み」があるため,治っていないのだからとお考えになったとしても,当然には後遺症(後遺障害)があると判断されるとは限りませんので御注意下さい。
(4) 後遺症(後遺障害)について該当性の有無及び該当した場合の等級(1級から14級)が判断されます。従って,非該当を含めて15通りのパターンがあります。そして,後遺症(後遺障害)の該当性が判断された場合には,あなたの交通事故による損害が確定したこととなります。その上で,それぞれの等級に応じた内容の賠償が認められます。つまり,等級に応じた逸失利益(将来にわたる収入減少分の賠償)及び後遺障害(後遺症)慰謝料です。なお,症状固定前の治療期間について(傷害部分といいます)は,後遺症(後遺障害)とは,一応区分されますが,損害賠償額を算出するときには両方を合わせて行うのが通例です。
(5) 後遺症(後遺障害)も残さずに死亡するというのは最悪のケースです。被害者死亡の場合には,それで直ちに損害が確定します。この場合には,特有の賠償項目としては,葬儀費用・墓石等購入費用がありますが,後遺障害と同様に逸失利益及び死亡慰謝料が認められます。