- 1.逸失利益とは
- 2.逸失利益の計算方法
- 3.後遺障害認定等級と労働能力喪失率
- 4.基礎収入額をめぐる問題
- 5.労働能力喪失期間をめぐる問題
- 6.実際には減収がない場合の問題
- 7.労働能力喪失率を変動させる解決例
- 8.労働能力喪失がないとされる後遺障害の場合
5.労働能力喪失期間をめぐる問題
(1)原則
労働能力喪失期間は,症状固定日から原則として67歳までです。つまり,67歳まで働くこと,就労が可能としてその期間を労働能力喪失期間とするのです。例えば症状固定時に25歳であれば67歳までの期間が喪失期間となります。未就労者の就労の始期については,原則18歳としますが,大学卒業を前提とする場合は大学卒業時とします。この就労可能期間である喪失期間に対応するライプニッツ係数が(2)で述べたとおり代入されて計算されます。
(2)高齢者
症状固定時から67歳までの年数が余命年数の2分の1より短くなる高齢者の場合には,原則として平均余命の2分の1となります。ただし,労働能力喪失期間の終期については,職種,地位,健康状態,能力等に応じて,それとは異なる判断がされる可能性があります。
(3)18歳未満
原則としての労働喪失期間は,症状固定日から原則として67歳までというのは,同じですが,18歳未満であることから18歳に達するまでの年数のライプニッツ係数を引いて計算されます。つまり,(2)の式に当てはめると次の通りになります。
基礎収入額(年収)×労働能力喪失率×(67歳までのライプニッツ係数-18歳に達するまでのライプニッツ係数)
以下に,年齢及び就労可能期間に応じたものを御紹介します。
(4)むち打ち症をめぐる喪失期間の取り扱い
既に申し上げたとおり,むち打ち症に関して,逸失利益を決定づける労働能力喪失期間について14級9号では5年以下,12級13号では10年以下と,限定的に裁判実務でも考えていると言われていました。しかし,この点については,批判も多くあり,訴訟基準を示す書物でも事案に応じて適宜考えるべきであると戒めております。