- 1.逸失利益とは
- 2.逸失利益の計算方法
- 3.後遺障害認定等級と労働能力喪失率
- 4.基礎収入額をめぐる問題
- 5.労働能力喪失期間をめぐる問題
- 6.実際には減収がない場合の問題
- 7.労働能力喪失率を変動させる解決例
- 8.労働能力喪失がないとされる後遺障害の場合
7.労働能力喪失率を変動させる解決例
例として症状固定から10年間は,喪失率14%として,その後は喪失率5%とする解決方法がとられることがあります。つまり,喪失率を段階的に引き下げて,事例に応じた解決を図ろうとする方法です。その理由付けとしては,後遺障害に馴れることによって,その人が具体的な仕事の内容に関しては労働能力を回復することがあり得ることとか,被害者が若ければ柔軟性があることとか,ジョブトレーニングや日常生活の鍛錬で回復が期待できることとか,職場環境の整備で後遺障害がそれほどのマイナス要因とはならない可能性があるとか,極めて理想論に近いものがあります。確かに,そのような理由付けでこの方法が用いられていることに該当する事例も無いとは言えないとは思います。
しかし,多くは年齢と共に後遺障害がハンディキャップとして仕事をしていく上でのしかかってきて経済的にも不利益になることの方が多いと言えます。この労働能力喪失率を変動させる解決例は,裁判所においても大勢を占めているとは言えません。